2019/10/28
「片割れ」
いろんなものを日々
なくしながら生きている
なくしたと気づくものもあれば
なくしたことさえ
分からずにいるものもある
一昨日イヤリングを片方落とした
とても気に入っているものだったので
使った電車の沿線にある遺失物窓口に行ってみた
イヤリングの特徴を細かく伝えると
男性の職員さんは
ちょっとお待ちくださいと言って奥へ消えた
待つこと10分
男性はプリントアウトした紙を5、6枚持って来た
それはこの3日間に
東京の地下鉄で落とされた
迷子のイヤリング97個の記録だった
誰かが
買ったばかりでうきうきと
あるいはいつものように
自分の一部として身につけ
きっと右と左が対で
そのどちらかがここに記されている
イヤリングたちは
暗い保管室の中でささやき合う
迎えに来てくれるかしら
もう一度会えるかしら
けれど私は
そのリストから自分のイヤリングを
見つけることは出来なかった
そこには色と素材が書かれているくらいで
自分のものだとは特定出来なかったのだ
そのものを見たら
すぐに
分かるのに
なくしたことさえ忘れて
求め探しているのかもしれない
この入り組んだ
地下鉄のような迷路で
(c) 2017 あわやまり