あわやまりあわやまり

詩

2018/12/31

「ただひとりのわたし」

あのときの

秘密を打ち明けてくれた

一緒に星を眺めた

あなたは

もういない

 

あのときの

嬉しくてどきどきして

星に祈っていた

わたしも

いないのだから

 

この世界で

時が経つことの

なんと理不尽なことか

なんと有難いことか

 

たった今

世界でただひとり

人生でただひとりの

わたしは

一秒前のわたしに

キスをして

ありがとうを言う

 

詩集「線香花火のさきっぽ」より

(c) Mari Awaya

2017/12/24

「人生」

ちょっと出かけてきますね
ちょっとの間ですからね

 

そうやってきた
この世界ですもの
何をおみやげにしましょうか

 

いえいえ、おみやげは
あとからついてくるものですね
このちょっとの間を
はしからはしまで
精一杯楽しんでゆきましょう

 

このちょっとの間を
私ひとり分、できる限りに

 

 

(c) Mari Awaya
私家版詩集「眠って眠って、春」より

2017/11/04

「明日は明日」

明日、楽しみだな
なんにもないから
楽しみだな
明日になったら
考えよう
どこに行くか
誰と会うかな

 

明日、楽しみだな
まだ
なんにもないから

 

 

 

(c) Mari Awaya 2013
「みんなの詩集 夢ぽけっと」より

*歌曲にもなりました。

2017/11/04

「しっぽ」

靴にしっぽが生えた
右足も左足にも
右と左は気が合うらしい

 

行きたくないところには
行かない
行きたいところには
走って行く
大好きな人のとこには
しっぽ振って
飛んで行く

 

この靴を履くと
私は素直で照れくさい

 

 

 

(c) Mari Awaya 2013
「みんなの詩集 夢ぽけっと」より

2017/11/03

「ぐるぐるシーツ」

この一年で
たくさんのシーツに
巻かれたわたし

 

ぐるぐるぐるぐる
サビシーツ
ぐるぐるぐるぐる
カナシーツ
ぐるぐるぐるぐる
クルシーツ

 

一枚ずつ脱いで
いいえ むしろ
さなぎから脱皮するように
わたしは
新しい季節を迎える

 

 

(c) Mari Awaya 2012
私家版「わたし、ぐるり」より

2017/11/03

「あたたかな夢」

もうちょっとだよ
その先で待ち合わせだから

 

と誰かに微笑んで言われて
わたしは夢から戻って来た

 

今まで会ったことのある人か
それとも出会っていない人なのかすら
もうぼやぼやしてわからない

 

誰だろう

 

でもその先が
わたしが生きている先
ということなら
あなたはもうちょっとで
やって来てくれるんだね

 

 

(c) Mari Awaya 2009
手製本「春を躍る」より

2017/11/03

「パズル」

最近よく出かけるようになったせいか
パズルを拾うことが多くなった

 

パズルは誰かと出逢うための
予約券みたいなものだ

 

人は一つずつパズルを集めて
少しずつそれをつくっていく
普通のパズルのように
完成の絵は決まっていなくて
ブロック遊びのように
だんだんできる感じ
ゆっくり一つ一つ
はまるところにはめていく

 

だからパズルを拾った人は
それを大事にとっておいて
いつかそれを
探している人に出逢ったとき
渡してあげる

 

パズルはその人に出逢うために
あるようなもの

 

誰かさん
私、持ってますよ
あなたのパズル

 

 

(c) Mari Awaya 2009
手製本「春を躍る」、私家版「わたし、ぐるり」より

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