あわやまりあわやまり

詩

2025/01/01

「瞬き」

木々の隙間から見える
家々の明かりは
星の瞬きのよう

 

毎日
星に向かって
帰る

 

自分が帰れる星で
思う存分
しょぼんとしたり
お腹抱えて笑ったり
うっぷして泣いたりする

 

星の中で
安心して眠って
また朝が来る

 

当たり前のようにやってくる
奇跡を
そこにあり続けると思っている
幸福を
まだ本当には知らないで
鬱々とした気分で
リュックを背負う

 

その星の瞬きが
限りあるものだと
本当にはまだ知らないで

 

 

(c) 2024 あわやまり
「秋美 vol.36」より

2020/08/04

「グラデーション」

時代が変わる時
縄文時代から弥生時代へ
江戸時代から明治時代へ
一日で変わったわけではなく
人も習慣も暮らしも
グラデーションのように
だんだんと変化した

この世界の
大きな
小さな
何かが
終わるとき

終わりの兆しを見せて
グラデーションのように
終わっている状態を続けて
いつの日か完全に終わる

そして
終わりの兆しと同時に
気がつかないくらい
薄い色で
何か新しいことも
始まっていると信じたい
その色がはっきり見えるのは
まだ
先だとしても

 

 

(c) 2020 あわやまり

2020/06/12

「りんご狩り」

ひとりで

りんご狩りをしている

この園は広くて

こんなにたくさんのりんご

とりきれるのかと

不安になる

 

まだとりきらないうちに

台風で落ちてしまうかもしれない

一体いつになったら

とりきれるのかもわからない

 

りんご りんご りんご

いつになったら

私のかごはいっぱいになる

いっぱいになって

また空っぽになって

本当にいっぱいになるのは

いつだろう

 

でも本当はわかってる

私はただ りんごを

ひとつずつ ひとつずつ

とっていけばいい

今手にとる このひとつの

このりんごのことだけを

考えて

 

 

(c) 2014 あわやまり

→詩画集「夜になると、ぽこぽこと」より

 

2020/05/23

「心」

なんだか分からない

どんなものかも把握できなくて

なかなか、絶対につかめない

 

自分のものなのに

よく分からないのだから

他の人のなんかは

もっとよく分からない

 

でもだから、よかった

形が分からないから

全部焼いてなくすことも

居場所も知らないから

まるごと何処かに

置き去りにすることもできない

 

この方がよかった

なんだか分からなくて

つかめないからこそ

それは、守られているようだから

 

 

(c) 2005 あわやまり

私家版詩集「日々のしずく」より

2020/05/06

「受け入れる」

どうかラッキーなことが

来ますように

どうかどうか

起こりますように

と願ってばかりいるより

今の自分を

ああ、こういうのも

幸せだなあ

なんて思えている時に

ラッキーはふっと

降りて来るような気がする

 

 

*この詩は四つ葉のクローバーをモチーフにしたものです。

4つの葉にはそれぞれ意味があり、日本では希望、幸福、愛情、健康と言われます。

 

(c) 2016 あわやまり

「2016年 詩と絵のカレンダー 4月より」

 

 

2020/04/22

「この星のリレー」

今日も

この星のどこかで

バトンは手渡される

 

人は皆

この星に生まれたとき

自分ひとり分のいのちと

そのいのちを誕生させた

すべての人の

想いを受け取る

 

もしかしたら

ずーとさかのぼって

人ですらないときのことも

 

誰に伝えようとしているんだろう

何を伝えようとしているんだろう

 

この星の

終わりの方の世界を

生きている私たちは

それを知らないまま

あるいは知りながら

そんなことはどうでもいいという人も

偶然のように必然に

つなげているんだ

明日へ 明日へ

 

 

(c) 2009 あわやまり

→詩集「ぼくはぼっちです」より

2020/02/29

「私の立つところには私だけ」

自分のつらさが

苦しみが

分かってもらえていない

と思うとき

それも当然だ、と

割り切ることも

必要なのかもしれない

 

だって世の中に

本当の意味で

同じ立場の人なんて

いない

 

一見似ているようで

分かり合えそうだけれど

根っこが違ったり

根っこは同じだけれど

今吹いている風は違ったりする

 

そう思っても

どうしてか

やっぱりすこしでも

分かってもらいたい

と思ってしまうのは

弱さなのか

それとも

愛が欲しいだけなのか

 

 

 

(c) 2020 あわやまり

秋美vol.32より

2020/02/19

「水曜の睡魔」

水曜の夜は

なぜだか分からないけれど

八時くらいに眠くなる

そして眠ってしまう

 

もしかしたら水曜の夜には

知らない方がいい

なにかしらの事柄があって

(十時頃に悪魔の子どもが尋ねてくる、とか

可愛がっている近所の犬が狼に変身する、とか

部屋中にグリンピースがわいてくる、とか)

私はそれを第六感でキャッチして

自ら眠る体勢に

持っていっているのかもしれない

 

知らない方がいいことは

この世にいくつかある

 

 

 

(c) 2008 あわやまり

 

2020/02/11

「四十五分の穴」

愛するわんこが穴を掘って

その中に入っていった

そしてもう二度と戻って来なかった

その穴は

横にした時計の中心に私がいると考えて

四十五分の位置だとしよう

 

私はしばらくはずっと

四十五分の穴ばかり見て暮らした

ずっと見ていても穴は動くわけがなくて

更にはわんこが顔を出すこともない

もう戻ってこないことを

分かっているからこそ

悲しくて悲しくてどうしようもない

どうしようもないけど

どうにもならない

 

どうにもならないことって

世の中にはたくさんある

 

深いため息をひとつ

こんな気持ちはもうたくさん

思い切って四十五分でない方向を

向こうかとも思った

けれども他の方を向いたからといって

四十五分の穴がなくなるわけでは勿論ない

その穴は多分ずっと変わらない

そこに何か他のものが住み着くなんて事も

ありえない

だから例えば

今度は十五分にいる子猫に夢中になっても

四十五分の穴の存在は一生変わらない

 

唯一変わっていくのは

私が立っている位置なのだろう

そこは確実に、良くも悪くも止まらずに

ほんの少しずつ上へ上へと動いて行く

だから日に日に

少しずつだけれど

四十五分の穴が遠くなっていく

だんだん霞んで見えなくなる

ずっと見つめているのもつらい

だけど薄れていくのも悲しい

 

でも確実言えることは

わんこの掘った穴は絶対になくならない

それは

わんこがいた、ということも

絶対になくならないと言うこと

 

 

 

(c) 2020 あわやまり

2020/02/08

「なにげないこと」

日常の

なにげないことを

ふっと話し合えたりするのは

結構、馬鹿にならない

それがあるだけで

心が救われたりするのだから

 

だから逆に

それがないと

致命傷ってわけでもないのだけど

息が少し苦しいような感じになる

死ぬほど

ではないんだけど

 

 

 

(c) 2020 あわやまり

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