あわやまりあわやまり

詩

2019/11/16

「出会う」

この歌に出会うまで

今日までかかった

数年前に

世に出ていた

いい歌詞だって

評判だった

歌なのに

 

この本に出会うまで

今日までかかった

何十年も前に

書かれていた

有名な作家の

本なのに

 

その歌や本の来た道と

私の興味のベクトルが

偶然という場所で

決まっていたことのように

ぶつかったから

 

 

(c) あわやまり

→詩集「ぼくはぼっちです」より

2019/10/31

「あなたがいる世界」

生まれたてのあなたを

抱いたのは暑い日だった

まだ目も見えていないあなたは

とてもちいさくて

こわれてしまいそうだった

 

あなたがいる世界では

あなたがいない世界のことを

想像するのはむずかしい

 

すこし前まで

あなたのいない世界は

当たり前だったと言うのに

 

世界は

常に塗り替えられる

だんだんと

突然に

 

そして明日は

気がつかないくらいに

全然違う世界になっている

 

 

(c) あわやまり

詩集「線香花火のさきっぽ」より

2019/10/23

「みたらし団子」

野球のユニフォームを着た少年が

みたらし団子を持っている

ここは電車の中だ

 

彼の隣には

おしゃれをした若い女性が座っている

少年のみたらし団子は

たれをたっぷりつけて

つややかだ

 

それだけに 心配だ

 

少年にたれがついてしまうのなら、仕方がない

だけれどもし、隣の女性についてしまったら

これからデートに行くかもしれない

彼女はどうするだろう

 

速やかに、食べてしまえばいいのに

その思いをよそに

少年はみたらし団子を食べようとしない

 

たまに激しく揺れる電車の中で

みたらし団子をじっと見つめ

行方を見守る一人の女のことを

食いしん坊だと

どうか 思わないで欲しい

 

 

 

(c) あわやまり

2019/10/05

「火傷」

久しぶりに火傷をした

水ぶくれになった

指先だったから

かなり痛い

 

何で火傷したかと言うと

炊きたてのご飯だ

あの、罪のなさそうな

つやつやしている

白いご飯

油断していたのだ

 

私は初心にかえる

見せかけや間違った思い込みで

信じすぎるのは、危険だ

 

 

 

(c) 2019 あわやまり

2019/03/03

「かみ」

かみをかいにいく

しをいんさつするために

かみはおもたい

ずっしりと、おもたい

ビニールぶくろもやぶれそうだ

 

それにしをいんさつする

なおしてはまたいんさつする

それがかさなりかさなり

さんじゅうさつめのファイルに

なるころだ

 

これをだれがよむんだろう

これをだれがよんでくれるんだろう

とおもいながらも

わたしはきょうも

かみにしをいんさつして

ファイルにとじる

 

ふかくじつなせかいで

たしかなたいせつなものが

じぶんがしんじているものが

そこにあるんだと

じぶんをあんしんさせるように

だれかにとどくように

いのりながら

 

(c) Mari Awaya 2019

「秋美」vol.31より

2018/07/22

「ちいさなお皿でもいい」

ないってことを いしきすると

ないってことで

あたまがいっぱいになって

ない ない ない

があたまにいっぱい

 

ありすぎることを きょうふにおもうと

ありすぎるってことが

あたまをせんりょうして

たいへん たいへん ありすぎる

であたまがいっぱい

 

どのときも

あたまがいっぱいだと

はんたいのことを

想像することができない

 

ないにおびえているときは

あることを

ありすぎるにふあんなときは

それがへっていくことを

あたまのなかのテーブルの

ちいさなお皿ぶんくらい

想像できれば

テーブルクロスがパッとひかれて

ちがうけしきがみえてくる

 

 

(c) Mari Awaya 2018

2018/07/03

「点」

今わたしのたましいは

どこらへんにいるのか

わたしの人生は

たましいにしてみれば

ひとつの点だ

 

宇宙のなかで

その点をつなぎ合わせて

生きたり還ったりする

 

その線が向かうところを

知らないけれど

もしかしたら

最初の点に

還ったりするのかもしれない

 

 

(c) Mari Awaya 2018

*11月に出版予定の詩集からこぼれた一編です。

2018/04/21

「リーリリリー」

左耳から
リーリリリーリリリリー
テテーンテテテテテーン
というような音が聞こえる
かすかな機械音みたいな
あるいはこちらに
信号を送っているような音

 

幻聴かもしれない
けれどもしかしたらどこかで
私にメッセージを送っている
誰かがいるのかもしれない
この星のどこかに
この宇宙のどこかに

 

その内容を解読するには
もう少し時間がかかりそうだけれど
眠れぬ夜の子守唄のように
ずっと耳の中で

 

(c) Mari Awaya 2018

2018/03/25

「しお」

部屋に塩を置いてみた
机の上に置いてみた

 

見ているだけで
口の中が
しょっぱくなるみたい

 

わたしもこんな
見えないくらい小さくて白い
しょっぱいものになってみたい

 

それで
あの人の中に入り込んで
ヒリヒリさせてやりたい
わたしはそこで溶けて
最後に
ざまあみろ
って言ってやるの

 

 

(c) Mari Awaya 2018

2018/03/15

「まるちゃんがいる」

まるちゃんがいなかったとき

そのことを表すなら

0だ

まるちゃんがいることは

まるちゃんがいなかったとき

いないことは

0のまま

 

でも

まるちゃんはもういる

当たり前のように

それがもうずっとそうだったみたいに

そこからいなくなったら

マイナス1になる

 

つまりまるちゃんが

いてもいなくても

もうここに存在するから

いる、の1か

いたのにいない、のマイナス1か

もう0にはならない

 

わたしは生きている間ずっと

そばにいてもそうじゃなくても

まるちゃんには1であって欲しい

 

 

(c)Mari Awaya 2018

ページの先頭へ

ページの先頭へ