あわやまりあわやまり

詩

2019/03/03

「かみ」

かみをかいにいく

しをいんさつするために

かみはおもたい

ずっしりと、おもたい

ビニールぶくろもやぶれそうだ

 

それにしをいんさつする

なおしてはまたいんさつする

それがかさなりかさなり

さんじゅうさつめのファイルに

なるころだ

 

これをだれがよむんだろう

これをだれがよんでくれるんだろう

とおもいながらも

わたしはきょうも

かみにしをいんさつして

ファイルにとじる

 

ふかくじつなせかいで

たしかなたいせつなものが

じぶんがしんじているものが

そこにあるんだと

じぶんをあんしんさせるように

だれかにとどくように

いのりながら

 

(c) Mari Awaya 2019

「秋美」vol.31より

2018/07/22

「ちいさなお皿でもいい」

ないってことを いしきすると

ないってことで

あたまがいっぱいになって

ない ない ない

があたまにいっぱい

 

ありすぎることを きょうふにおもうと

ありすぎるってことが

あたまをせんりょうして

たいへん たいへん ありすぎる

であたまがいっぱい

 

どのときも

あたまがいっぱいだと

はんたいのことを

想像することができない

 

ないにおびえているときは

あることを

ありすぎるにふあんなときは

それがへっていくことを

あたまのなかのテーブルの

ちいさなお皿ぶんくらい

想像できれば

テーブルクロスがパッとひかれて

ちがうけしきがみえてくる

 

 

(c) Mari Awaya 2018

2018/07/03

「点」

今わたしのたましいは

どこらへんにいるのか

わたしの人生は

たましいにしてみれば

ひとつの点だ

 

宇宙のなかで

その点をつなぎ合わせて

生きたり還ったりする

 

その線が向かうところを

知らないけれど

もしかしたら

最初の点に

還ったりするのかもしれない

 

 

(c) Mari Awaya 2018

*11月に出版予定の詩集からこぼれた一編です。

2018/04/21

「リーリリリー」

左耳から
リーリリリーリリリリー
テテーンテテテテテーン
というような音が聞こえる
かすかな機械音みたいな
あるいはこちらに
信号を送っているような音

 

幻聴かもしれない
けれどもしかしたらどこかで
私にメッセージを送っている
誰かがいるのかもしれない
この星のどこかに
この宇宙のどこかに

 

その内容を解読するには
もう少し時間がかかりそうだけれど
眠れぬ夜の子守唄のように
ずっと耳の中で

 

(c) Mari Awaya 2018

2018/03/25

「しお」

部屋に塩を置いてみた
机の上に置いてみた

 

見ているだけで
口の中が
しょっぱくなるみたい

 

わたしもこんな
見えないくらい小さくて白い
しょっぱいものになってみたい

 

それで
あの人の中に入り込んで
ヒリヒリさせてやりたい
わたしはそこで溶けて
最後に
ざまあみろ
って言ってやるの

 

 

(c) Mari Awaya 2018

2018/03/15

「まるちゃんがいる」

まるちゃんがいなかったとき

そのことを表すなら

0だ

まるちゃんがいることは

まるちゃんがいなかったとき

いないことは

0のまま

 

でも

まるちゃんはもういる

当たり前のように

それがもうずっとそうだったみたいに

そこからいなくなったら

マイナス1になる

 

つまりまるちゃんが

いてもいなくても

もうここに存在するから

いる、の1か

いたのにいない、のマイナス1か

もう0にはならない

 

わたしは生きている間ずっと

そばにいてもそうじゃなくても

まるちゃんには1であって欲しい

 

 

(c)Mari Awaya 2018

2018/03/05

「神様の用意したリュック」

それには

言葉がたくさんつまっていて

その人に一生のうち必要な

言葉たちが入っている

 

ふとした時に

人生の重要な局面で

神様は誰かに

その言葉たちを言わせる

 

そのリュックに

もうひとつだけ

入っているものがあって

それは

なのだけど

家族でも

恋人でも

夫や妻でも

自然でも人類でも

愛することが出来る

これはリュックに入っていながら

どんどん出て来る

不思議なもの

 

忘れてはならないのは

自分を愛することも

出来ると言うこと

 

 

 

(c) Mari Awaya 2017

秋美29号より

2018/02/16

「なにもかも」

なにもかも

上手く行くってことは

本当はないのかもしれない

ほとんど上手く行っているように見えて

大きいか小さいか

わからないけれど

上手く行かないことが

隠れている

 

だからもしかしたら

なにもかも

どうにもならないってことも

本当はないのかもしれない

本当にもうどうにもならないように見えて

小さな

希望や救いが

そこには混在している

 

その存在に気がつければ

なにもかも

ではなくなり

それはいい方向へ導いてくれる

強く光る星となる

 

 

 

(c) Mari Awaya 2016

2018/01/22

「もうひとつの世界」

駅にある
パン屋の隣の
そのカフェは
突き当たりの壁一面が
鏡になっている
空間を広く見せるため
なのかもしれない

 

そのカフェにいると
鏡の向こうには
もうひとつの
違う世界があって
よいしょ
と入っていけば
向こうの世界に
入れそうな心持ちになる

 

向こうの世界のパン屋で
パンを買い
駅からバスに乗って
家に着くと
そこには
誰が待っているのだろうか

 

 

(c) Mari Awaya
「秋美」vol.28より

2017/12/29

「隠し場所」

カレンダーに隠れて
見えていない壁には
実は四角い穴があいています

 

わたしはそこへ
この一年の秘密を
すこしずつ隠していって
カレンダーをはずす頃に
一緒に捨ててしまうのです
積み重なった些細な秘密は
そのくらいで捨ててしまっていいでしょう

 

そうですね、それじゃあ
もっと大きくて重い秘密は
わたしのおへそにでも隠しましょう

 

 

(c) Mari Awaya
私家版詩集「帰り道」「わたし、ぐるり」より

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