あわやまりあわやまり

詩

2020/03/24

「意志」

新年明けたばかりの電車に乗る

 

規則正しくぶら下がるつり革は
そろってゆれる
電車がゆれるたび
同じにゆれる

 

その様を眺めていると
その中で何故か頑なに

ゆれていないつり革を見つけた

 

よく見ると
そのつり革は
口をへの字にして
何か言っている

 

ゆれるから
ゆらされるのは
ごめんだ
ぼくはぼくのみちをいく
ほかがよくみえても
ときに
こどくがつらくても

ここにいたって

みちはえらべる

 

誰も気がつかなくても
強く頑なに

ゆられない

孤高のつり革

 

 

 

(c) 2020 あわやまり

「秋美vol.32より」

2020/03/18

「カーテン」

わたしの部屋の窓の方から

ちいさな声で

できる

できない

できる

できない

と聞こえる

 

近づいてよく見ると

カーテンの花柄の

赤い花の花びらが

声に合わせて

ひらりひらりと落ちていく

どうやら花自身で

花占いしているみたいだ

 

何ができるの?できないの?

 

と聞くと

声と花びらはぴたっと止まった

 

もしかしたら他の花も

何を占っているのか知らないけれど

(わたしの恋とか仕事のことかも)

花占いをしているのかも

 

最近カーテンの花の色が

薄くなった感じがしていたのは

そのせいかな

 

 

 

(c) 2012 あわやまり

→詩画集「わたし、ぐるり」より

2020/03/04

「暗い道のひみつ」

・・・・・・・・・・(黄色い家の赤い車・作)

 

このあいだ僕は見てしまった

ちょうど日が暮れて

色んな家の色んな夕飯のにおいが

優しく皆の帰りを待っている頃

 

誰も通っていない道の

電信柱がこう

一回腰をかがめて

そうしてから

今度は反対にそって伸びをした

 

僕はとても驚いて

隣の家の寝ている車に

教えてやろうかと思ったけれども

確かによく考えてみると

電信柱だって四六時中ああやって

まっすぐ立っていなきゃならないのだから

たまに伸びをするくらい

してもいいものだと思った

 

この話がみんなの暇つぶし程度の噂になるのは

ちっともいい気分がしなくて

僕は誰にも言わないことに心に決めて

じっとしていた

その電信柱はすでに

僕よりもじっとしているようだった

 

 

(c)2004 あわやまり

「へその中の話たち -冷たい風が運んだ話-」

2020/02/09

「シルシルとみかこさん」

黄緑の細い草の

小さいぼんぼんのような

ひげのシルシルが

道端で何匹かうろうろしている

最近よくシルシルを見かけるけれど

今年になって初めて出会った

 

どこいったの

どこいったの

どこいけばいいの

どこいけばいいの

どうしたらいいの

どうしたらいいの

 

みんなで反復する

 

どうしたの?

とかがんで話しかけたら

その中でも動きの遅い子が

 

どこいけばいいか

わからないの わからないの

 

迷子なの?

と聞くと

 

まいごって なあに?

と言うので

 

えっと

一緒にいた人とはぐれてしまったり

行く道が分からなくなることかな

 

まいごだ

ぼくたちまいご

ずっとついてきたひとが

どこにいるかわからない

そのひと

どこにいけばいいか わからない

どうすればいいか わからない

そういってた

 

じゃあ、その人も

迷子になっちゃったのかな

そう言うと

 

まいご どうすればいいの?

どうすれば いいの?

と聞くので

 

その人ってどんな人なの?

と聞くと

 

ミカコさん

いいにおい

おーえる

コンカツしてる

 

わたしは困ってしまって

 

そうか、どうしようね

とりあえずうちの庭に来る?

と聞くと

 

みかんのき ある?

と言うので

 

ないけど、みかんあるよ

と返すと

 

じゃあ いくいく

みんな このひと

みかんあるって

いこう いこう

 

そしてひげのシルシルたちは

ぞろぞろとわたしの庭にやって来た

ミカコさんがどこに行ったかは

分からないまま

 

 

 

(c) 2014 あわやまり

→詩集「夜になると、ぽこぽこと」より

2020/02/02

「噴水に住む妖精」

水の薄い膜を作って流れる

公園の噴水

晴れた日には

虹が見えることもある

 

その中に住んでいる妖精は

ちいさくて美しい

 

彼女は噴水の中から見る景色

ぼやけてよく見えない

でもなんだか

きれいに見えるものたちを

現実だと思っていて

噴水が止まって

そこから出て見る世界は

夢だと思っている

 

だから人間も

夢の中の生き物だと思っていて

いつもベンチで本を読んでいる彼のことも

逢えない人に恋をしてしまったのだと

思い込んで悲しんでいる

 

 

 

(c) 2011 あわやまり

2020/01/31

「裏山のマーシー」

裏山のマーシーが

最近ちょくちょく

わたしの家にやって来て

わたしの部屋にまで入って来る

しっぽのみじかい

出っ歯で

ちゅうくらいのねずみみたいなの

 

保健所に電話すると

 

マーシーはこちらではどうにも

巣を作ったわけではないんですよね?

悪さもしていないと

区役所に相談したらいかがですか

 

そう言われて

区役所に電話すると

 

マーシーですか、裏山のね

巣を作ってないのなら

こちらとしてはなんとも

あ、マーシーを研究している方が

この地域にいらっしゃいますので

ご相談してみては

と言われる

 

早速マーシーを研究している人に

電話をする

 

すると予想に反して

研究者は女性だった

 

最近裏山のマーシーが

わたしの部屋にまで入って来て

そこで眠ってしまったりするんです

なんだかマーシーがいると

ため息が出るような

すべてに ずーんと

わたしだけ

おいていかれる

気持ちになるんです

とわたしが説明すると

 

そうですか

と落ち着いた優しい声の研究者は答える

私が言えることは

あなたのやりたいことを

夢中にやってください

ということです

もしやりたいことがわからなければ

あっちこっち手を出してみて

 

あの

わたしはマーシーのことで

相談しているんですけど

 

わかっていますよ

裏山のマーシーは

あなたが変われば

来なくなります

来ても庭を通り過ぎるくらい

私は裏山のマーシーを

もう何十年も研究しています

あなたがあなたを大好きになれば

マーシーは来ないわ

と研究者は言い切った

 

わたしは

わかりました

とよくわかっていなかったけれど

言ってから電話を切った

 

その夜

マーシーは来なかった

わたしは

 

わたしはわたしが好き…

 

消えそうな声で言ってみて

目を閉じた

 

 

 

(c) 2014 あわやまり

詩画集「夜になると、ぽこぽこと」とより

2020/01/28

「星のにおいのパジャマ」

初めて行った町で

待ち合わせまでの時間

ぶらぶらしていると

かわいらしい雑貨や洋服のお店を見つる

 

かわいいワンピース

と思って手に取ると

ピンで止めてある小さな説明書きに

 

「星のにおいのするパジャマ」

半永久的ににおいは消えません。

夜もぐっすりです。

 

と書いてあって

あ、これパジャマなんだ

しかも星のにおいってどんなだろ

と思ってかいでみると

あ、そういえば星のにおいってこんなんだ

とかいだことはないはずなのに思いだして

かわいいし

星のにおいだし

ぐっすり眠りたいし

買うことにした

 

帰って注意書きを読むと

何度洗濯してもにおいは消えませんが

太陽に長時間あてるのは避けてください

とある

 

あ、お日様のにおい

ついちゃうからかな

と納得し

早速パジャマを着て

ベッドに入る

 

ぐっすり眠れるかどうかは

是非一度、お試しを

 

 

(c) 2009 あわやまり

2020/01/23

「怖いのとんでけ頭巾」

私の行きつけのレンタルビデオ屋は

すこし変わっている

ビデオ、DVD、CD、本、ゲーム、マンガ

貸し出しはシステムも料金も普通

 

ただ店内にはいつも

香水おばさんがいる

香水おばさんはお客から注文されると

手持ちのにおいを調合して香水を作る

だから香水おばさんのブースには

においのサンプルがいくつもあって

店内はいつも香水くさい

 

それから

「怖いのとんでけ頭巾」が置いてある

これは初め子ども向けに作られたもので

怖い映画を観てしまった後

怖いのがずっととれない子の

頭の中にある怖いシーンを

溶かしてしまうというもの

形は防災訓練で使う防災頭巾に似ている

それを怖いシーンを思いだしながら

十分くらいかぶっていればいいのだ

するとだんだん思い出せなくなって

溶けてしまう

誰が作ったのか定かでないが

この店の店長の知り合いに

発明をしている人がいると聞いたことがある

 

この頭巾を最近は大人も使いはじめた

大人でも映画が怖いからだと思ったが

そうでない人もいるらしい

昼間買い物帰りの主婦や

夕方学校帰りの高校生

夜遅くに帰ってきた会社員と思われる男性

いろんな人がコンビニに寄るように来ては

頭巾をかぶっていく姿を見かける

どうやら

日常の中にある怖いシーンや

怖いという思いさえも

頭巾は溶かしてくれるらしい

目をつむって眉間にしわを寄せていたのが

安心したように穏やかな表情に変わっていく

 

こわいの とんでけー

こわいの とんでけー

こわいの とけて とんでいけー

 

いつか私もやってみようかと思いながら

今日は笑顔のかわいい女優が出ている

青春映画を借りて帰った

 

 

 

(c) 2007 あわやまり

詩画集「ぽちぽち、晴れ」より

2019/12/17

「涙プリンセスとヒラメ係長」

駅の中央改札を出たら

声をかけられた

振り返っても 誰もいない

 

こっちです

と下から声がする

下を見ると ヒラメがいた

 

あなたを今年の

「涙プリンセス」に決定しました

つきましては広報誌に載せたいので

インタビューをよろしいですか?

 

わたしはびっくりして

でもまず しゃがんで

 

えっと、すみません

なんですか?「涙プリンセス」って?

 

するとヒラメは

まばたきを一つして

ええ、わたくしどもは

この駅のホームで

お客様がこぼされるため息や

おとされる涙を

人知れず食べているのです

年々わたくしどもが増やされているのには

ため息や涙が増えてきているから

なんですね

あ、ちなみにわたくしは

下りのホームをまとめています

ヒラメ係長です

 

とヒラメは言う

 

それで…

 

とわたしが解せない顔をしていると

 

あ、失礼しました

それで今年から

何か楽しいことに役立てたいと

この沿線の会社からのお達しで

この一年で一番たくさん

ため息をこぼした「ため息キング」

涙をおとした「涙プリンセス」

を探して表彰し

広報誌にもコメントをいただこうかと

 

わたしはあきれて

 

そんなのいやです

それ嬉しくないですよ

表彰されても

失礼します

 

わたしが立ち去ろうとすると

 

ああ、すみません

ちょっとお待ちを

 

ヒラメは水もないのに

す〜 と近づいてくる

写真やお名前などは載せません

一言だけでも

もう決まったことゆえ

上がうるさくて

「ため息キング」はくださいましたよ

 

わたしは立ち止まって聞く

 

ため息さんはなんて?

 

「ため息をつくのは、駅だけと決めています。キングになれて複雑な気分です。来年はもっと明るい賞を作った方がいいですよ」

 

ほら、やっぱり

変ですよこんなの

とわたしが言うと

 

でもわたくしが決めたことではなく

わたくしも日ごろは

ため息と涙を食べている

しがないヒラメなんです

 

と言い返され

ヒラメの上下関係なんかを思ったら

少しかわいそうになり

ふーっと息を吐いてから一気にしゃべった

 

「プリンセスになったのは初めてですが、駅で泣くとすっきりして家に帰れます」

これでいい?

 

ヒラメ係長は

ありがとうございました

あの〜、それで

お名前などはもちろん載せませんが

何かニックネームのようなものを

お願いしたいのですが

 

勢いがついたわたしは少し考えて

 

「なにもかもが蜃気楼」

 

と答える

 

結構でございます

お時間をとらせてすみませんでした

広報誌と賞状は改めてお渡しします

では

 

と言ってヒラメ係長は

す〜 と急ぎ気味に

わたしから離れて行った

 

バスロータリーに向かいながら

はじめての 涙プリンセス 蜃気楼に泣く

とつぶやいた

 

 

(c) 2010 あわやまり

→詩集「今日、隣にいたひと」より

2019/12/04

「のび」

のびはうらやましかった

 

ぼくは人が伸びをしたときに

出てくる

それは寝起きの

まだ眠たい伸び

ずっとパソコンで仕事

肩が凝ったときの伸び

 

ぼくが双子なら

だいぶ違ったのに

 

のびのび

 

自由でゆったりとした

こころの、からだの

環境の状態

 

のびのび のびのび

 

ぼくも相方を見つけて

人のこころを

ぐーんと広く

してみたいもんだな

 

 

(c) 2012 あわやまり

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