あわやまりあわやまり

詩

2020/04/29

「夜の行進」

眠ろうと

目を閉じている

私の耳のそばを
小人たちが行進して行く

 

長い行列だ
ずっと歩いて行く

 

私が目を開けたり
声をかけてしまったら
消えてしまう

 

しばらく歩く音が続いた後
遠ざかって行くのと

同じくらいに
小さな声が聞こえた

 

いいなぁ
こんなふうに寝てるだけで
明日に行けるなんて
ぼくらは毎晩

歩いて

明日まで行くのに

 

 

 

 

(c) 2020 あわやまり

2020/04/27

「ある執事の提案」

大きな地震が来たらどうしましょう

と不安がるお嬢様に

執事はこう言った

 

自信を持って言えますのは

ご自身では

地震を

どうすることもできません

ならば地震が起きたとして

そうですね

濁点がひとつ下に落ちると

じしんがしじん

詩でも書かれては

いかがでしょう

 

 

 

(c) 2009 あわやまり

2020/04/22

「この星のリレー」

今日も

この星のどこかで

バトンは手渡される

 

人は皆

この星に生まれたとき

自分ひとり分のいのちと

そのいのちを誕生させた

すべての人の

想いを受け取る

 

もしかしたら

ずーとさかのぼって

人ですらないときのことも

 

誰に伝えようとしているんだろう

何を伝えようとしているんだろう

 

この星の

終わりの方の世界を

生きている私たちは

それを知らないまま

あるいは知りながら

そんなことはどうでもいいという人も

偶然のように必然に

つなげているんだ

明日へ 明日へ

 

 

(c) 2009 あわやまり

→詩集「ぼくはぼっちです」より

2020/04/18

「おじさんと肉まん」

夢のなかで

わたしのご先祖にあたるおじさんが

 

おじさん

中華街で歩きながら

肉まんをみっつも

食べたんだよお

と言って

がははと笑った

 

いいなあ

わたしも食べたいなあ

つられて

がははと笑う

 

夢のなかはときどき

とても自由で平和で

楽しげだ

 

 

(c) 2017 あわやまり

2020/04/16

「ベリッ」

後ろでベリっと言ったので

何かと思って立ち止まった

 

どうやら私の後ろではなく

背中

らしいので

見えない

 

おそらく

何かが剥がれたらしかった

でも

下を見ても何も落ちていないし

手で触っても何もない

 

ああ

なにもない

が剥がれたのかもしれない

なにもない

と自分を
思い込んでいたことが

 

 

 

(c) 2020 あわやまり

2020/04/01

「ほんとうのあなた」

あなたの心の奥に

澄んで綺麗な湖があること

あなたはちゃんと

知っている?

 

その湖を

守るのもあなた

愛するのもあなた

あなたにしか出来ない

そうしていれば湖には

たくさんの動物が集まり

豊かな森になっていく

 

 

 

(c) 2017 あわやまり

*桜の花言葉「精神の美」「優美な女性」より書いた

2017年「詩と絵のカレンダー」より

 

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