あわやまりあわやまり

詩

2019/11/08

「ごそごそ道」

昔うちの裏に

空き地があって

木や雑草が

ぼうぼうに生えていた

 

そこに

ごそごそ道という道があった

 

そこはうちの人しか通らない

おばあちゃんと姉と私

あとのら猫も通っていた

 

道のないところを

ごそごそいわせながら

歩いていくから

ごそごそ道

 

その道を通っていけば

八百屋にも

クリーニング屋にも

公園にも

近道して行かれる

 

今はもう

家が建って

なくなってしまったけれど

おばあちゃんと手をつないで

ごそごそ

ごそごそ

いわせて

歩いたあの道が

まだどこかに

あるような気がするよ

 

 

(c) あわやまり

詩集「線香花火のさきっぽ」より(他の詩も読める特設ページへ→)

2019/11/06

「色とりどりの糸」

洋服のお直し屋さんに

たくさんの色の糸が

グラデーションになって

きれいに並んでいる

 

色がいっぱいあるのは

いいな

いろんな色の服が直せる

 

人生もきっとそうだな

いろんな思いをした方が

糸の色が増えて

こころの

ほつれたのや

やぶれたのを

治すことができる

 

どんな色でも

ゆっくり 時間で

糸を巻くようにして

私の中のすみっこに

置いておいて

そしてまた いつか

やぶれたりした時に

今度はそれを治すのを

手伝ってくれる

 

 

(c) あわやまり

詩集「ぼくはぼっちです」より

2019/11/03

「抹茶ソフトあんみつ」

全然わかっていなかった

とわたしが言うと

 

何が?

とテルオくん

 

だからね

たとえば人の話を聞いていて

本当に真剣に聞いて

理解しようと思って

わかったと思うの

でも実際同じようなことが

自分におきてみて

はじめて

わかったって思ったの

ああ、わかってなかったんだって

 

テルオくんはクリームあんみつの

ソフトクリームを食べながら聞いている

 

あとね

人のことを

ちょっと会っただけで

ううん、前からの知り合いであっても

なんとなくわかったように思っちゃう

でも本当は

その人のほんのちょっとしか

わかっていないんだって

わかったの

 

わたしの抹茶ソフトあんみつは

汗を流しはじめた

するとテルオくんは

 

僕なんてさ

じぶんのこと

どれくらいわかっているか

それすら わかんないよ

みんなそうなんじゃない

 

わたしはやっと

抹茶ソフトを二口食べる

 

そうかなぁ

と落ち込むわたしに

 

わかっていなかった

ってわかったことがすごいと思うけど

たいていそんなこと気にしないでしょ

まあ、溶けちゃうから食べたら

とテルオくん

 

そうかなあ

そうなのかな

なんか今日はアイスって気分じゃなかった

普通のにしとけばよかったなぁ

とわたしが言うと

 

やった、じゃあ抹茶ちょうだい

とテルオくんはわたしのお皿を

自分の方へ持っていった

 

あれ、抹茶嫌いじゃないの?

と聞くと

 

そんなことないよ

あ、ほらね

きみはまだ僕のことを

わかっていない

にしし、と笑った

 

 

 

(c) あわやまり

私家版詩集「テルオくんとわたし」より

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