あわやまりあわやまり

詩

2020/09/05

「地下からの美しいメロディ」

お風呂に浸かって
じーーーっとしていると
どこからか
軽やかなメロディが聞こえる

高い調子で

コロコロ笑うように軽やかな

楽しそうなメロディ

 

よく聴いていると

それは水の音だった
しかも

下水を流れる水たちの

 

こうやって1日の終わりに
楽しいことがあった日も
つらいことがあった日も
肩も腰もバリバリな夜も

お風呂で涙する夜も

 

その身体や心までも

洗い流したお湯たちは

流されて行きながら
あんなに楽しげで軽やかな
メロディを奏でている

 

その音色を
身体の芯があたたまるまで
聴いていた雨の夜

 

 

(c) 2020 あわやまり

2020/08/13

「リアルタイム」

今日の夕暮れの空は

この一度だけ

再放送はない

 

その瞬間

いっしょに空を見られたなら

それはどんな縁だか

分からないけれど

素晴らしいひとときを

共有したことになる

 

それは一度だけ

リアルタイムでないと見られない

 

 

 

(c) 2020 あわやまり

2020/08/04

「グラデーション」

時代が変わる時
縄文時代から弥生時代へ
江戸時代から明治時代へ
一日で変わったわけではなく
人も習慣も暮らしも
グラデーションのように

だんだんと変化した

 

この世界の

大きな

小さな

何かが

終わるとき
それはもしかしたら
だんだんと終わるのかもしれない

「終わり」のところから
それもまたグラデーションのように
終わっている状態を続けて
いつの日か完全に終わる

 

そして
「終わり」と同時に
気がつかないくらい
薄い色で
何か新しいことも
始まっていると信じたい
その色がはっきり見えるのは
まだ

先だとしても

 

 

(c) 2020 あわやまり

2020/07/15

「私からの電話」

わたしが

選ばなかった道にいる
私から
ほんの時々
電話がくる

 

それは呼び出し音だけだったり
がんばって!の

一言だったりする

 

その電話が
怖いものだとは全然思わない

 

選ばなかった道にいる私は

そっちで正しかったよ、とか

こっちの方がよかったのに、とか

言うわけでもなく

ただ

今のわたしを応援してくれている

 

そんな気さえするような

気まぐれで

あたたかで

一番信じられるエール

 

 

(c) 2020 あわやまり

2020/07/01

「カラカリホロリ」

電車が激しくゆれると

 

カラカリ(ホロリ)

 

と音がした

 

わたしのすぐ近くのようだけれど

見渡してもわからない

 

また激しく電車がゆれる

 

カラカリ(ホロリ)

 

わたしの中から聞こえたようだった

こころか

あたまか

いぶくろか

しきゅうか

分からないけれど

 

 

 

(c) 2010 あわやまり

詩集「今日、隣にいたひと」より

2020/06/23

「芯」

新宿に着くと

スーツを着た人たちが

いっぺんに

さーと降りた

 

空いた車内

床に芯が一本

落ちていた

 

曲げるのでもなく

折られるのでもなく

まるごと落ちていた

 

誰かがさっき

捨てたのか

もしかしたら

新しいのを見つけて

それをこれからの

芯にするのかもしれない

 

 

 

(c) 2010 あわやまり

詩集「今日、隣にいたひと」より

2020/06/12

「りんご狩り」

ひとりで

りんご狩りをしている

この園は広くて

こんなにたくさんのりんご

とりきれるのかと

不安になる

 

まだとりきらないうちに

台風で落ちてしまうかもしれない

一体いつになったら

とりきれるのかもわからない

 

りんご りんご りんご

いつになったら

私のかごはいっぱいになる

いっぱいになって

また空っぽになって

本当にいっぱいになるのは

いつだろう

 

でも本当はわかってる

私はただ りんごを

ひとつずつ ひとつずつ

とっていけばいい

今手にとる このひとつの

このりんごのことだけを

考えて

 

 

(c) 2014 あわやまり

→詩画集「夜になると、ぽこぽこと」より

 

2020/06/08

「消しゴム」

小さな子どもは

たまに

消しゴムをくれたりする

キャラクターの絵が描いてあるのとか

面白いかたちのとか

それは気まぐれだったり

誕生日のプレゼントだったりする

 

それらは消しゴムであって

消しゴムではない

 

だってほとんど

字が消せない

 

字は消せないから使わないけれど

私はずっと持っている

その子たちが大きくなっても

大事に

 

捨てられない

大切な手紙みたいに

 

 

 

(c) 2020 あわやまり

2020/05/23

「心」

なんだか分からない

どんなものかも把握できなくて

なかなか、絶対につかめない

 

自分のものなのに

よく分からないのだから

他の人のなんかは

もっとよく分からない

 

でもだから、よかった

形が分からないから

全部焼いてなくすことも

居場所も知らないから

まるごと何処かに

置き去りにすることもできない

 

この方がよかった

なんだか分からなくて

つかめないからこそ

それは、守られているようだから

 

 

(c) 2005 あわやまり

私家版詩集「日々のしずく」より

2020/05/13

「ないものは、ない」

断捨離とか

片付け上手とか

世間では流行っていて

もれなく私も最近

色々なものを処分した

 

しかし

もう今更

どうしようもないけれど

ああ、あれを

捨てなきゃよかった

ほんとに捨てなきゃ

よかったのになあと

思うものがあって

夜も眠れない

 

もしかして捨てていないかも、と

クローゼットを片っ端から見てみても

捨てたことは確からしい

 

ああ

手放したところに

また

新しいものが入ってくる

はずだったのになあ

 

そうか

この捨てたものへの執着こそ

手放せれば

きっとこの心に

何か新しいものが

入ってくるんだ

 

ひらめいたような

なだめるような気持ちで

 

ないものは、もうない

 

と口に出して

クローゼットを閉めた

 

 

 

(c) 2017 あわやまり

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