あわやまりあわやまり

詩

2020/08/04

「グラデーション」

時代が変わる時
縄文時代から弥生時代へ
江戸時代から明治時代へ
一日で変わったわけではなく
人も習慣も暮らしも
グラデーションのように

だんだんと変化した

 

この世界の

大きな

小さな

何かが

終わるとき
それはもしかしたら
だんだんと終わるのかもしれない

「終わり」のところから
それもまたグラデーションのように
終わっている状態を続けて
いつの日か完全に終わる

 

そして
「終わり」と同時に
気がつかないくらい
薄い色で
何か新しいことも
始まっていると信じたい
その色がはっきり見えるのは
まだ

先だとしても

 

 

(c) 2020 あわやまり

2020/07/15

「私からの電話」

わたしが

選ばなかった道にいる
私から
ほんの時々
電話がくる

 

それは呼び出し音だけだったり
がんばって!の

一言だったりする

 

その電話が
怖いものだとは全然思わない

 

選ばなかった道にいる私は

そっちで正しかったよ、とか

こっちの方がよかったのに、とか

言うわけでもなく

ただ

今のわたしを応援してくれている

 

そんな気さえするような

気まぐれで

あたたかで

一番信じられるエール

 

 

(c) 2020 あわやまり

2020/07/01

「カラカリホロリ」

電車が激しくゆれると

 

カラカリ(ホロリ)

 

と音がした

 

わたしのすぐ近くのようだけれど

見渡してもわからない

 

また激しく電車がゆれる

 

カラカリ(ホロリ)

 

わたしの中から聞こえたようだった

こころか

あたまか

いぶくろか

しきゅうか

分からないけれど

 

 

 

(c) 2010 あわやまり

詩集「今日、隣にいたひと」より

2020/06/23

「芯」

新宿に着くと

スーツを着た人たちが

いっぺんに

さーと降りた

 

空いた車内

床に芯が一本

落ちていた

 

曲げるのでもなく

折られるのでもなく

まるごと落ちていた

 

誰かがさっき

捨てたのか

もしかしたら

新しいのを見つけて

それをこれからの

芯にするのかもしれない

 

 

 

(c) 2010 あわやまり

詩集「今日、隣にいたひと」より

2020/06/12

「りんご狩り」

ひとりで

りんご狩りをしている

この園は広くて

こんなにたくさんのりんご

とりきれるのかと

不安になる

 

まだとりきらないうちに

台風で落ちてしまうかもしれない

一体いつになったら

とりきれるのかもわからない

 

りんご りんご りんご

いつになったら

私のかごはいっぱいになる

いっぱいになって

また空っぽになって

本当にいっぱいになるのは

いつだろう

 

でも本当はわかってる

私はただ りんごを

ひとつずつ ひとつずつ

とっていけばいい

今手にとる このひとつの

このりんごのことだけを

考えて

 

 

(c) 2014 あわやまり

→詩画集「夜になると、ぽこぽこと」より

 

2020/06/08

「消しゴム」

小さな子どもは

たまに

消しゴムをくれたりする

キャラクターの絵が描いてあるのとか

面白いかたちのとか

それは気まぐれだったり

誕生日のプレゼントだったりする

 

それらは消しゴムであって

消しゴムではない

 

だってほとんど

字が消せない

 

字は消せないから使わないけれど

私はずっと持っている

その子たちが大きくなっても

大事に

 

捨てられない

大切な手紙みたいに

 

 

 

(c) 2020 あわやまり

2020/05/23

「心」

なんだか分からない

どんなものかも把握できなくて

なかなか、絶対につかめない

 

自分のものなのに

よく分からないのだから

他の人のなんかは

もっとよく分からない

 

でもだから、よかった

形が分からないから

全部焼いてなくすことも

居場所も知らないから

まるごと何処かに

置き去りにすることもできない

 

この方がよかった

なんだか分からなくて

つかめないからこそ

それは、守られているようだから

 

 

(c) 2005 あわやまり

私家版詩集「日々のしずく」より

2020/05/13

「ないものは、ない」

断捨離とか

片付け上手とか

世間では流行っていて

もれなく私も最近

色々なものを処分した

 

しかし

もう今更

どうしようもないけれど

ああ、あれを

捨てなきゃよかった

ほんとに捨てなきゃ

よかったのになあと

思うものがあって

夜も眠れない

 

もしかして捨てていないかも、と

クローゼットを片っ端から見てみても

捨てたことは確からしい

 

ああ

手放したところに

また

新しいものが入ってくる

はずだったのになあ

 

そうか

この捨てたものへの執着こそ

手放せれば

きっとこの心に

何か新しいものが

入ってくるんだ

 

ひらめいたような

なだめるような気持ちで

 

ないものは、もうない

 

と口に出して

クローゼットを閉めた

 

 

 

(c) 2017 あわやまり

2020/05/10

「風の強い日」

木々がめちゃくちゃダンスを踊るくらい

風の強い日

隣の隣に住む大男のシーツが

私の庭に飛んできた

 

青い小花柄のシーツ

と思ったら

シーツではなくて

大きなかっぽう着だった

 

シーツだと思ってしまうくらいに大きい

私はフローリングに広げて

私のシーツと比べてみたり

腕を通してみては

ひたすらその大きさにびっくりした

 

その後隣の隣へ行って

大男にかっぽう着を返した

少し話しをすると

このかっぽう着は

大男のお母さんが使っていたもので

こっちへ出てくるときに

お母さんからもらったのだという

大男はしきりに

ありがとうございますと

うれしそうに言った

 

家に帰る短い道すがら

大男と大男のお母さんのことを考えて

私もお母さんが恋しくなって

びゅうびゅういう風に向けて

おかぁさぁぁん

と言った

 

風は少し弱まって

またすぐにびゅうびゅういった

 

 

(c) 2012 あわやまり

→私家版詩集「あの星から見える、うちの明かり」より

2020/05/06

「受け入れる」

どうかラッキーなことが

来ますように

どうかどうか

起こりますように

と願ってばかりいるより

今の自分を

ああ、こういうのも

幸せだなあ

なんて思えている時に

ラッキーはふっと

降りて来るような気がする

 

 

*この詩は四つ葉のクローバーをモチーフにしたものです。

4つの葉にはそれぞれ意味があり、日本では希望、幸福、愛情、健康と言われます。

 

(c) 2016 あわやまり

「2016年 詩と絵のカレンダー 4月より」

 

 

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