あわやまりあわやまり

詩

2019/12/07

「ほんとうの友達」

前に知り合いの人が

「環境がつくりだした友達」

という言葉を使った

 

学校や会社

アルバイトに習い事

その場にいるから友達だけれど

その場がなくなると

会わなくなるような人のことだ

 

大人になれば

そういう人が今までに

たくさんいたなぁと思い返す

その人たちも

人生の限られた間だったけれど

その時はとても大切だったよ

ありがとう、元気でいてねって

心の中で、思っている

 

そして

今も仲良くしている友達は

大切な宝のような

ほんとうの友達だから

これからもどうぞよろしく

いつもありがとう、って

直接会って、言いたい

 

 

 

(c) 2018 あわやまり

2019/12/04

「のび」

のびはうらやましかった

 

ぼくは人が伸びをしたときに

出てくる

それは寝起きの

まだ眠たい伸び

ずっとパソコンで仕事

肩が凝ったときの伸び

 

ぼくが双子なら

だいぶ違ったのに

 

のびのび

 

自由でゆったりとした

こころの、からだの

環境の状態

 

のびのび のびのび

 

ぼくも相方を見つけて

人のこころを

ぐーんと広く

してみたいもんだな

 

 

(c) 2012 あわやまり

2019/11/30

「虹の石」

小学校のころ

時々出店のおじさんがやって来た

小学校の前の坂を下ったところに

台の上に魅力的な品々を並べて

下校してくる生徒を待っているのだ

 

めんこ

スーパーボール

煙がでるカード

階段を勝手に降りるバネ

 

小学生の私達にとっては

どれも魅力的だった

 

中でも私がとりわけ魅了されたのは

クリスタルだった

太陽にかざすと七色に光って

虹を自分ひとりのものにできる気がした

 

その虹の石が

どうしても欲しかった

けれども私の家は小学校から

子どもの足で片道三十分

帰っておばあちゃんにおねだりしても

小学生には高い買いものに

なかなかいいよと言われず

やっとおこずかいをもらえて

三十分かけて小学校に戻ると

出店のおじさんはもういないのだった

 

毎回そんなことの繰り返し

結局虹の石を手に入れることはできなかった

 

でも手に入れられなかったからこそ

虹の石への想いは強く

その光り輝く様子を

ずっと忘れることはなかった

 

今でも虹の石がつくりだす光りを

私の中に持っている

 

 

(c) 2008 あわやまり

2019/11/27

「ぼんやりゾーン」

テルオくんが連絡もなしに

三十分待ち合わせに遅れてきた

 

でもトコトコと歩いてやってきて

 

やあごめん

うっかり「ぼんやりゾーン」に座っちゃって

と言う

 

「ぼんやりゾーン」って最近できた電車の?

あれどうなるの、座ると

 

テルオくんはポリッと頭をかいて

 

僕さ、ぼんやりするのなんて

どこでもできるからって

ちょっとバカにしてたんだよね

でも気がついたらそこに座っちゃってて

で我に返ったら終点だったの

バカにできないね

「ぼんやりゾーン」

 

へえ

なにが違うの、他の席と

 

いやあ、よくわかんないなあ

ほら、ぼんやりしてたから

今度座ってみなよ

わかるから

 

ふうん

じゃ、行こうか

とわたしが言って

駅の北口にあるカフェに向かう

歩きながら

 

しかし

 

とテルオくんは締めくくった

 

人生にはぼんやりするときが

たまには

ひつようだね

 

 

(c) 2009 あわやまり

2019/11/26

「忘れてしまった約束」

ほかの目をたいそう気にする星がいて

私はほかの星より輝いているかしら

もっときれいに光れないかしらと

磨き職人をやとって

自分を丸ごと磨かせた

 

でも自分では

どのくらい磨きがかかったか

どのくらい輝いているのか分らなくて

職人のうちの一人を

いつも見える青い星へと向かわせた

 

あそこの星へ行って

私がきれいに光っているか

確かめてきてちょうだい

きれいに光っているのなら

私に向かって

あなたはどの星よりもきれいです

と教えてちょうだい

そうしたらあなたにだけ

とびきりのご褒美をあげます

 

職人は青い星へ向かった

けれども思いのほか遠かった

星へ着いた頃には年をとっていた

そしてこの星に

何をしに来たのかを

忘れてしまった

 

年をとった職人は青い星で

よく星を見上げた

ことさらきれいに光る星を見ては

何か忘れていることがある気がしたり

その星の光が

何か言っているように見えたりした

 

とびきりのご褒美がなんだったのか

今でも、分らない

 

 

(c) 2008 あわやまり

2019/11/20

「はしご屋さん」

私の住んでいる家の近くに
はしご屋さんがある
はしご屋さんには
いろんな種類のはしごがある

 

普通のはしご
おもちゃのような小さいはしご
木で出来たオブジェのようなはしご
黄色の細いはしご
青い長いはしご
オレンジ色の曲がったはしご
いたるところにはしごが置いてあって
まるで公園のよう
でもそれらは売っているのではない

 

大きな段差や大きな溝
思いがけない穴に
たちふさがれて進めなくなったとき
みんなはしご屋さんを呼ぶ

 

大体ぞうさん公園の砂場くらいの溝です
という風に電話で言うと
それに合いそうなはしごを
トラックにつんで来てくれる
そして溝にかけてくれて
私たちは前へ進めるのだ

 

近ごろはしご屋のおじさんは
新しいはしごを作るのに熱心だ
それもすごく大きくて
横へ縦へ、伸び縮みする

 

最近あるお客さんがね
穴の大きさはよく分からない
月くらいに大きいように思うって
電話してきたんだ
ずいぶん思いつめた感じでね
もしかしたらこれはもう
はしご屋の仕事じゃないかもしれないけどさ
おじさんもなんとかしてあげたいからさ
その先に進めるきっかけは
どこにあるか分からんものだからね
と言って作業をつづけていた

 

段差や穴を渡るのは自分で行くしかない
けれど誰かがその助けをしてくれる

そういう人がいてくれることが心強い

 

おじさんにさよならを言って家へ向かう
マンホールを踏まないように
大袈裟に飛びながら帰った

 

 

(c) 2007 あわやまり

詩画集「あわやまりのひとしずく」より

2019/11/19

「サイダー」

手のひらから
腕から
顔から頭から
からだ全部から
炭酸が抜けていくように
私の中の
悲しみが
ふつふつふつ、と
放出される

それが終わっても
まだまだ悲しみは
泉のように
湧いてくる

それは時々
涙になって
私は気の抜けたサイダーみたいに
だらんと力の入らないまま
寒い部屋の中の
あたたかい布団の中で
動けないでいる

 

 

(c) 2018 あわやまり

2019/11/16

「出会う」

この歌に出会うまで

今日までかかった

数年前に

世に出ていた

いい歌詞だって

評判だった

歌なのに

 

この本に出会うまで

今日までかかった

何十年も前に

書かれていた

有名な作家の

本なのに

 

その歌や本の来た道と

私の興味のベクトルが

偶然という場所で

決まっていたことのように

ぶつかったから

 

 

(c) 2008 あわやまり

→詩集「ぼくはぼっちです」より

2019/11/13

「夜のひと」

毎夜眠れないので

夜をめくる光景を

眺めるようになった

 

大きな 大きな

暗い闇夜で

大勢の夜のひとたちが

ゆっくり ゆっくり

一ページずつ 夜をめくる

 

今日もそれを眺めていたら

休憩で交代したのか

夜のひとが一人こちらへやってきた

 

あなた

最近ずっと眺めていますね

眠れないのなら

めくり人になりますか

 

と言われる

わたしはベッドの上に起きて

 

いいえ、大丈夫

わたしは夜のひとではないから

めくり人にはなれません

 

そうですか

夜に眠るというのは

どんなものですか

そんなにいい、ものですか

 

いい、ものです

とても大切なことです

 

じゃあ、さぞかし

おつらいでしょう

 

そうですね

 

私たちは平等に

夜をめくらなければならない

そうでないと

朝のひとに迷惑がかかって

一日が崩れていく

私がしてあげられるのは

これくらいです

 

と言って

濃い藍色のちいさな石をくれた

 

この石で頭を三回軽くたたいて

眠る時間ですよ

と言うんです

夜のひとは夜でない時

好きな時に眠りますから

まぁ、これは夜のひとがやることだから

効くかわからないけれども

 

ありがとうございます

やってみます

 

夜のひとは闇へ帰って行った

 

私は渡された石で

頭を三回たたいて

もう眠る時間ですよ

と言ってベッドに横になり

ゆっくりと 目を閉じた

 

 

(c) 2008 あわやまり

私家版詩集「いくつかの夜をめくった」より

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