あわやまりあわやまり

詩

2019/12/24

「クリスマスのカピパラ」

カピバラは片想いをしていた

少し年上の先輩は

職場が同じだし

今はただ見ているだけで幸せだった

 

少し前に人気を博したカピパラも

最近はさほどでもない

まだ学生だった頃は

カピバラだというだけでモテた

彼氏もいたけれど

元々おとなし性格で

一人でいるのが好きなので

あまり長くは続かなかった

 

それに

スキンシップをとるようになると

どの彼氏も言うのが

きみ、見かけより毛が固いんだね

と言うことで

それがカピバラのコンプレックスになった

確かにカピバラの毛は

うさぎのそれよりも固いらしかった

でもそんなこと

カピバラのせいではない

撫でていて気持ちよくない

と言うのが最もだとしても

 

そんなわけで

カピバラは片想い中の先輩に

毛を触られないように気をつけた

片想いの間だけでも

夢をみていたいのだ

先輩は時々

後輩の女の子(自分と同期だ)の頭を

ポンポンとすることがある

あれをやって欲しい気は満々だが

やはり毛が心配だった

 

年末の忘年会で

先輩と同じテーブルになった

いつも口数のすくないカピバラだが

恥ずかしくてもっとしゃべらなくなる

あの同期の女の子も同じテーブルだった

話はクリスマスも目前

みんなの予定は?という話だった

先輩は

僕は気になる子と

イルミネーション見に行くんだ

と言った

そのとき同期の女の子が

恥ずかしそうに笑ったのには気がつかず

盛り上げ役の男の子が

えー、まじっすか

誰と行くんですか〜

どんな子タイプなんですか?

と聞くと先輩は

えっと、誘うのはまだなんだけど

ほぼほぼね

やわらかい感じの子だよ

そう言われて

カピバラは敏感に反応した

 

やわらかい感じ

私だって心はやわらかだわ

自分に質問が回って来た時

動揺もしていたからか

ええ、今年も彼と温泉に

なんて言ってしまったカピバラ

 

社内のうわさ話で

先輩と同期の女の子が付き合っていると

耳にするのは間もなくだった

 

クリスマス

カピバラは月一のご褒美として行く

温泉施設に来ていた

ここで一ヶ月の疲れと

失恋の痛みを洗い流すのだ

温泉につかり

美味しいものを食べ

温泉につかり

甘いものを食べ

夜景をみる

 

施設の浴衣をまとい

夜景を見ながら

来年は有言実行

好きな人と一緒にイルミネーションを見るぞと

心に決めたカピバラだった

 

 

 

(c) 2016 あわやまり

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