あわやまりあわやまり

詩

2020/06/23

「芯」

新宿に着くと

スーツを着た人たちが

いっぺんに

さーと降りた

 

空いた車内

床に芯が一本

落ちていた

 

曲げるのでもなく

折られるのでもなく

まるごと落ちていた

 

誰かがさっき

捨てたのか

もしかしたら

新しいのを見つけて

それをこれからの

芯にするのかもしれない

 

 

 

(c) 2010 あわやまり

詩集「今日、隣にいたひと」より

2020/06/12

「りんご狩り」

ひとりで

りんご狩りをしている

この園は広くて

こんなにたくさんのりんご

とりきれるのかと

不安になる

 

まだとりきらないうちに

台風で落ちてしまうかもしれない

一体いつになったら

とりきれるのかもわからない

 

りんご りんご りんご

いつになったら

私のかごはいっぱいになる

いっぱいになって

また空っぽになって

本当にいっぱいになるのは

いつだろう

 

でも本当はわかってる

私はただ りんごを

ひとつずつ ひとつずつ

とっていけばいい

今手にとる このひとつの

このりんごのことだけを

考えて

 

 

(c) 2014 あわやまり

→詩画集「夜になると、ぽこぽこと」より

 

2020/06/08

「消しゴム」

小さな子どもは

たまに

消しゴムをくれたりする

キャラクターの絵が描いてあるのとか

面白いかたちのとか

それは気まぐれだったり

誕生日のプレゼントだったりする

 

それらは消しゴムであって

消しゴムではない

 

だってほとんど

字が消せない

 

字は消せないから使わないけれど

私はずっと持っている

その子たちが大きくなっても

大事に

 

捨てられない

大切な手紙みたいに

 

 

 

(c) 2020 あわやまり

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