あわやまりあわやまり

詩

2017/12/20

「おじぎ草」

友人がくれたおじぎ草をベランダに置いた
手作りの小さい器に植わっていて
なんともかわいい
撫でてやる度
しゃわしゃわ しゃわ
といって葉を閉じてしまうのもかわいい

 

ところが
夏の終わりに近づいても
おじぎ草は大きくなり続けた
あと少ししか大きくならない
と聞いていたので驚いた
大きな鉢に移しかえても
撫でてやると従順に
しゃわしゃわ しゃわ
と大きな葉を閉じる

 

そのうちに
朝起きて撫でてやると一緒に
しゃわしゃわ しゃわ
と閉じられる葉の中に入ってしまうようになった
初めのうちはそれでも数分すると中から出てきて
バナナだけ食べてからのろのろと仕事にいった
さらに日が経つと
葉っぱの中に入っていくのが日課になってしまった
もうずっと葉っぱの中で眠りたいと思い
入っている時間が日に日に長くなった
仕事にも遅刻して怒られることが増えていった

 

眠りたくて眠りたくて仕方がなかった
身体のいろんなところや
心のすみずみから
休もう、休もう
というメッセージがきていた
周囲の勧めもあり
楽しく生きていけるぞ
と思えるようになるまで
おじぎ草の中で眠ることにした

 

たくさん働かせた身体と
いろいろ悩ませた心も
ゆっくり眠りましょう
しゃわしゃわ しゃわしゃわ しゃわ
みなさん
ちょっとの間だけ
さようなら
きっとじきに
元気になります

 

 

(c) Mari Awaya
手製本「眠って眠って、春」より

2017/12/18

「ラッキーバス」

ちっぽけな常識にとらわれた
ちっぽけな悩みを
背中いっぱいにしょって
夕方の駅に辿り着いた
小銭しか入っていないお財布で
今できる一番の贅沢
たこやきを一箱買った

 

けれどもふと見ると
私の小さな幸せ
今日はラッキーバスが
ロータリーに停まっていた

 

やったやった
駆け足でバスに向かう
このバスの存在を
皆はあまり知らないようで
たいていいつも中はがらがら
しかもラッキーバスなのに
料金は他のと同じで二百十円

 

ラッキーバスは
ロータリーを後にして
人込みを抜けて山へと向かう
沈みかけた太陽を
追い掛けて追い掛けて
追い付いた所で見えたのは
たった一つの太陽が見せる
たった一回きりのさよならショー
濃い淡い青色と薄い水色
それに黄色の強いオレンジが
きれいに合わさった演出に
私の小さくちっぽけになりかけていた心は
少しだけ膨らんだ

 

世界はとても広いと言う事を
ちっぽけな私をつくり出したのは
ちっぽけな私の価値観だったと言う事を
身を以て知ったあの日々の事を
ひざの上にたこやきの温かさを感じながら
ほんの少し思い出せたよ

 

ラッキーバスは急な坂を上りきって
最後の乗客とまだ温かいたこやき一箱を
静かに降ろして夜の中に消えて行った

 

 

(c) Mari Awaya

2017/12/13

「蓋しか」

蓋をしよう
そうした方が
きっと楽に生きられる

 

全て不確かな上の確かなもの
薄い紙切れ一枚も
模様が透けるきれいな紙の束も
重いキーホルダーの付いた堅そうな鍵も
幼い二人を写した幸せ溢れる写真も
引き出しの中の素っ気ないラベルのフロッピーも
お菓子の空き箱に入れて土に埋めた手紙も
それからそれから
はかり知れないほどたくさんの人を魅了する大きな目も
私の中指の曲がった両の手も
あの子のすらりとした外反拇趾の長い足も
あの人の右下にほくろのある小さな口も

 

不確かな上の不確かなものは
この際どうでもよいのだけれど
やっぱり問題は確かなもので
それは私がそうと
決めつけているだけにすぎないのです
だけれどそれを不確かと
認めるのには弱すぎるので
決めつけてしまうのは
仕方のないこと
つらくないこと
更にはきっと楽なこと

 

不確かなものを確かなものと思い込んで
不確かな世界の中で
不確かな私は
今日も不確かに蓋をする

 

 

 

(c) Mari Awaya

2017/12/09

「浮かんで沈んで」

湯舟に浸かって
お腹を膨らませたり
しぼませたりして
浮かんで
沈んで
浮かんで
沈んで

 

私は少し
複雑な風船のよう

 

 

 

(c) Mari Awaya
「日々のしずく」より

2017/12/05

「雨の日の雫観察」

雨の日の電車の中
私は手すりにつかまりながら
窓ガラスについた
雨の雫を眺めていました
電車が走るとその雫たちは
流されて同じ方へ向かいます
それはまるで各々が
生きているような動きをします

 

他の雫の道を辿ったり
二つが合流して
一つの雫になったり
またギリギリで
すれ違ったり

 

見ていると不思議に
一つの雫を応援してしまうのです
嫌な奴にぶつからないよう
いい雫と一緒になれるよう
がんばれ、がんばれ
もうちょっとこっちだ
よしよし、いけいけ
幸せになるんだぞ!

 

地上に生まれおりた私たちも
きっと 誰かがそうやって
ちょっと離れた空の方から
一人一人を それぞれ熱心に
応援してくれているみたいに

 

 

 

(c) Mari Awaya

2017/11/29

「ほんのときどき」

布団を取り込む夕暮れのベランダで
日が沈みきるほんの少し前の学校の屋上で
果てしなく長い間の一瞬よりも少しだけ長く
永遠を感じたりする

 

 

 

(c) Mari Awaya

2017/11/28

「神様が集めているもの」

顕微鏡でしか見えない微生物
それから何億年を超えて
虫や動物
人間にまでなったのは

 

神様が
集めているからじゃないだろうか
生き物たちが感じる
こころのようなものを
特にきっと
幸せと感じるもの
楽しいと弾けるもの
嬉しいと喜ぶもの
それはただの感情でなく
宇宙のエネルギーにも
なるのかもしれない

 

目に見えないそれらを
宇宙のすみずみまで
浸透するように
たくさん たくさん
いきわたらせたくて

 

 

© Mari Awaya 2015

2017/11/21

「大きすぎて、今は」

それが
大きすぎて
分からなかった
白い鳥の絵だという事が
かなり遠ざかってみて
ようやく分かった

 

どこにいるか
分からなかった
霧の中だと思っていた
晴れたとき
大きな山の中腹の
雲の中にいるのだと
やっと分かった

 

今夢中にやっていて
まだかたちにならないもの
迷って戸惑って
どこにいるか分からないときも
同じようなこと

 

大きすぎる絵が何なのか
自分はどこにいたのか
いつか
分かる日が来るはず

 

 

 

© Mari Awaya 2015

2017/11/21

「小鳥の助言」

私が眉間にしわをよせていると
顔見知りの
歌声の素敵な小鳥がやって来て

 

どうしてそんなに
むずかしくしちゃうの?
本当はシンプルよ
生きたいところで
生きたいひとと
生きればいいわ
と言う

 

それは分かっているけど
どうしたらいいか分からないの
と私が言うと

 

また考えちゃうのね
さすがにんげんね
と言って
やわらかな春の歌を
歌ってくれた

 

 

 

© Mari Awaya 2015

2017/11/21

「かたまり」

肩にかたまりが、いる
特に右のが、大きい
じっとしていて、動かない

 

かたまりはどこから来るか
色んなところからやって来る
上司の嫌味
同僚の愚痴
家族に嫌気
友人と比較
自分に落胆
未来に不安

 

テケテケテケとやって来て
ぴたっとくっつき
からだの一部になる
そこが自らの家であるように
頑として動かない

 

たたいたり
話しかけたり
するけれど
いっこうに動いてはくれない

 

痛くて重くて
わたしは泣いた
一人っきりの部屋で
わんわん泣いた

 

するとかたまりが
ひどく熱くなってきたので
そっと右の肩に手を当てると
かたまりじゃない何かが
こう伝えてきた

 

ユルメナ
ユルシナ
ナガシナ

 

わたしはその言葉を考えた
かたまりをさすりながら
いつもと違って
慈しみをもって
さすりながら

 

 

 

© Mari Awaya 2015

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