あわやまりあわやまり

詩

2019/10/25

「みのむし」

みのむし、と言えば

ひとつだけ思い出すことがある

 

小学校低学年のとき

わたしは体が弱く

ちびでやせっぽっちで

食も細く

給食はいかに少なく盛ってもらうかを

一番に考えているような子だった

 

そのころ

理科の宿題で

みのむしをとってくる

と言う宿題がでた

 

そのときの担任の先生は

痩せていて背が高く

女の先生で

とても厳しい人だった

 

ある時などは

校外学習でおにぎりを持参するように言われ

おにぎりだけだと言われたのに

わたしの母が漬物を添えたのを見て

おにぎりだけと言いましたよ!

と指摘するほどの人だった

 

さておきわたしは

今も昔も虫は大嫌い

みのむしなんて探すのも嫌だったけれど

早朝に母について来てもらい

やっと見つけた

ちびでやせっぽっちのみのむし

 

それで何をするのかと思ったら

みのを切って

中の虫を取り出すと言うのである

わたしはぞっとした

とても出来ないと思った

ほとんど泣きそうだった

逃げ出したかった

 

あまりにショックで

どうやってやったのか覚えてないのだけど

(たぶん誰かにこっそりやってもらったのだと思う

隣の席の男の子とかに)

何とかしてみのを切ると

中には小さなかたまりが

動かないでいた

こわいから

よく見られなかった

 

きっとそのみのむしは体が弱く

少食で大きくなれなかったのだ

 

その後

人より遅れて成長期を向かえ

周囲も驚くほどの食欲で

すくすくと大きくなったわたし

みのむしを見ると

あの宿題と先生と

ちびだったころのことを

思い出す

 

 

 

(c) あわやまり

2019/10/23

「みたらし団子」

野球のユニフォームを着た少年が

みたらし団子を持っている

ここは電車の中だ

 

彼の隣には

おしゃれをした若い女性が座っている

少年のみたらし団子は

たれをたっぷりつけて

つややかだ

 

それだけに 心配だ

 

少年にたれがついてしまうのなら、仕方がない

だけれどもし、隣の女性についてしまったら

これからデートに行くかもしれない

彼女はどうするだろう

 

速やかに、食べてしまえばいいのに

その思いをよそに

少年はみたらし団子を食べようとしない

 

たまに激しく揺れる電車の中で

みたらし団子をじっと見つめ

行方を見守る一人の女のことを

食いしん坊だと

どうか 思わないで欲しい

 

 

 

(c) あわやまり

2019/10/21

「おじぎ草」

友人がくれたおじぎ草をベランダに置いた
手作りの小さい器に植わっていて
なんともかわいい
撫でてやる度
しゃわしゃわ しゃわ
といって葉を閉じてしまうのもかわいい

 

ところが
夏の終わりに近づいても
おじぎ草は大きくなり続けた
あと少ししか大きくならない
と聞いていたので驚いた
大きな鉢に移しかえても
撫でてやると従順に
しゃわしゃわ しゃわ
と大きな葉を閉じる

 

そのうちに
朝起きて撫でてやると一緒に
しゃわしゃわ しゃわ
と閉じられる葉の中に入ってしまうようになった
初めのうちはそれでも数分すると中から出てきて
バナナだけ食べてからのろのろと仕事にいった
さらに日が経つと
葉っぱの中に入っていくのが日課になってしまった
もうずっと葉っぱの中で眠りたいと思い
入っている時間が日に日に長くなった
仕事にも遅刻して怒られることが増えていった

 

眠りたくて眠りたくて仕方がなかった
身体のいろんなところや
心のすみずみから
休もう、休もう
というメッセージがきていた
周囲の勧めもあり
楽しく生きていけるぞ
と思えるようになるまで
おじぎ草の中で眠ることにした

 

たくさん働かせた身体と
いろいろ悩ませた心も
ゆっくり眠りましょう
しゃわしゃわ しゃわしゃわ しゃわ
みなさん
ちょっとの間だけ
さようなら
きっとじきに
元気になります

 

 

(c) あわやまり

私家版詩集「眠って眠って、春」より

2019/10/17

「だいだいあめ」

窓ガラスに夕焼けが

ぽっちゃり丸く

うつる列車があります

その列車は夕方にしか走りません

走ってすることは

だいだいあめを集めること

ガラスにうつった夕焼けが

ぽろんぽろんと

落ちてくるのを集めるのです

 

私達は一生に三回

そのあめだまを食べられます

食べたい時は

「だいだいあめだまセンター」に

三枚つづりの券を一枚切って

封筒に入れて送ります

この券はパスポートやなんかと一緒にして

大切にしておきます

 

最近体調も悪く心も元気がないので

初めてあめだまを送ってもらいました

あめだまを送ってもらうのは

人生最大の失恋をしたときとか

つらい病にかかったときとか

未来に希望がもてなくなったときとか

人それぞれです

 

ある人はこのあめだまを

何度も食べられたらいいのにと言います

けれどもこれは万人に平等に

一人三回と決まっています

 

券を送って三日後

小さい箱に入った郵便物が届きました

開けると白い綿の中に

ビニールで包んだだいだいあめがありました

私はそっとつっついて

それからつまんでビニールを破いて

かすかに光っているように見えるそれを

ぱくっと口の中に入れました

それは熱をもっているようで

舌の上でしゅわぁっと溶けました

 

これで悪いところは全て治る

とは思わずに

私の中に小さな太陽ができて

それが元気に導いてくれたらいいと思うのです

 

なくなってからも胸の辺りに

温かい感じが残っていました

 

 

 

(c) あわやまり

詩画集「ぽちぽち、晴れ」より

2019/10/14

「わたし像」

船で世界へ旅に出ようとした

あのころ

わたしは欲しいものを

なにも持っていないのに

「こうでなければいけないわたし像」を

何体も持って旅に出た

 

重くて ときに

私を押しつぶそうとするその像たちを

置いてきたくとも

置いてはこられなかった

 

同室の子たちは

狭いベッドの脇に並んだ

わたし像たちを見ると

たくさんいるんだね

でもよくできてる

これなんて

あの女優に似てるね

などと言った

 

十九の点を線でつないでいくような旅

様々な文化の国

出会った人々

語り合える友達

広い海

ものすごい数の星

 

旅はこの上なく楽しかった

本当に、この上なんてないんじゃないか

というくらいに

 

船旅にすっかりはまったわたしは

ろくに自室に帰りもせず

わたし像のことを忘れて時を過ごした

 

帰港間近になり

荷物をまとめようというときに

わたし像がぜんぶいなくなっているのに

気がついた

同室の子たちに聞いても

知らないと言う

 

砂漠の国で降りたかもれない

南の島が気に入って住みついたかもしれない

海に飛び込んだのかもしれない

海賊に持っていかれたかもしれない

 

でもわたしのこころは

海のように広々として

楽になっていた

 

わたしがこの旅で得た

たくさんのものと同じくらい

わたし像をなくせたことは

大きな収穫だった

 

 

 

(c) あわやまり

2019/10/10

「平日のオムライス屋」

本物か偽物か

はっきりさせたい

とわたしが言うとテルオくんは

へぇ、そうなんだ

とオムライスを口に入れてから言った

 

本物だと、どうなるわけ?

と言うので

本物だったら

胸張ってがんばって

生きていかれる

と答える

 

じゃ、偽物だったら?

そしたら

それでもがんばって

生きていかなきゃ

 

じゃあ別にはっきりさせなくても

いいんじゃない

それに

誰が決めるの

本物と偽物

 

どっかにいる誰か

本物がわかる人

 

それが誰か知ってるの?

 

知らないよ

 

じゃあ

はっきりさせようがないじゃない

ははは

とテルオくんは笑う

 

そうなんだけど

 

どっちでもさ

本物でも偽物でも

自分が思ったように

がんばって生きてれば

いいんじゃないの

仮にもしも

そういう判別があるとしても

もっと後から

ついてくるものかもしれないよ

 

わたしはオムライスの中にあるチーズを

フォークでのばしながら

そうなんだけどさ

とため息をつく

 

大丈夫

違う角度からみたら

みんな本物なんだから

そう信じてないと

生きていかれないんだから

ははは

とテルオくんは笑った

 

そして

でも僕はもし偽物でも

胸張って生きていくよ

と言って

もりもりサラダを食べた

 

 

(c) 2019 あわやまり

私家版「テルオくんとわたし」より

2019/10/09

「おみやげ」

たとえば

抽象的な絵

これはなんとかで

これはなんとか

ってせつめいしてくれる

 

たとえば

ちいさな石

ほら、おまめみたいに

みえるでしょ

ってじまんげ

 

たとえば

ずんぐりしたどんぐり

これね、なかに

むしがはいってるかもしれないから

きをつけてね

ってちゅういする

 

ちいさな手ににぎってくる

きみのおみやげは

毎日の中のたからもの

いつか忘れてしまっても

振り返れば ほら

目印にしてきたキレイな石みたいに

きらきらしているよ

 

 

(c) 2019 あわやまり

詩集「線香花火のさきっぽ」より

2019/10/07

「無限の雨」

空から無限()が

激しい雨のように

降ってきた

そこらじゅうに

散らばっていく無限(

 

わたしはこわくて

頭をかかえた

 

すると

 

8だと思え!

 

と声がした

 

そうだ、これは8だ

8 8 8

 

唱えていると

無限()はだんだん消えていって

一つだけ残った

自分が無限()なのか8なのか

わからなくなって

横になったり

縦になったり

している

 

手のひらに乗せてやると

やっぱり無限()の形になって

手のひらに吸い込まれるように

すっと消えた

 

 

(c) 2019 あわやまり

2019/10/05

「火傷」

久しぶりに火傷をした

水ぶくれになった

指先だったから

かなり痛い

 

何で火傷したかと言うと

炊きたてのご飯だ

あの、罪のなさそうな

つやつやしている

白いご飯

油断していたのだ

 

私は初心にかえる

見せかけや間違った思い込みで

信じすぎるのは、危険だ

 

 

 

(c) 2019 あわやまり

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