2017/12/13
いろいろ考える
「蓋しか」
蓋をしよう
そうした方が
きっと楽に生きられる
全て不確かな上の確かなもの
薄い紙切れ一枚も
模様が透けるきれいな紙の束も
重いキーホルダーの付いた堅そうな鍵も
幼い二人を写した幸せ溢れる写真も
引き出しの中の素っ気ないラベルのフロッピーも
お菓子の空き箱に入れて土に埋めた手紙も
それからそれから
はかり知れないほどたくさんの人を魅了する大きな目も
私の中指の曲がった両の手も
あの子のすらりとした外反拇趾の長い足も
あの人の右下にほくろのある小さな口も
不確かな上の不確かなものは
この際どうでもよいのだけれど
やっぱり問題は確かなもので
それは私がそうと
決めつけているだけにすぎないのです
だけれどそれを不確かと
認めるのには弱すぎるので
決めつけてしまうのは
仕方のないこと
つらくないこと
更にはきっと楽なこと
不確かなものを確かなものと思い込んで
不確かな世界の中で
不確かな私は
今日も不確かに蓋をする
(c) Mari Awaya
2017/11/21
いろいろ考える
「大きすぎて、今は」
それが
大きすぎて
分からなかった
白い鳥の絵だという事が
かなり遠ざかってみて
ようやく分かった
どこにいるか
分からなかった
霧の中だと思っていた
晴れたとき
大きな山の中腹の
雲の中にいるのだと
やっと分かった
今夢中にやっていて
まだかたちにならないもの
迷って戸惑って
どこにいるか分からないときも
同じようなこと
大きすぎる絵が何なのか
自分はどこにいたのか
いつか
分かる日が来るはず
© Mari Awaya 2015
2017/11/15
いろいろ考える
「幾何」
雨が降って
傘についてきた
雨粒たちを
部屋で乾かす
乾燥している部屋で
それはすぐに気化する
傘は幾何学模様
重なる色たち
眺めていると
どこを見ているのか
分からなくなって
頭がぼうっとする
どれほど
どれくらい
ここにこうしていたのか
どれほど
どれくらい
この世界にいるのかも
分からなくなって
© Mari Awaya 2015
*幾何…いくばく、とも読みます。
2017/11/09
いろいろ考える
「もし」
もし
とだけ
机に書いてある
続きを考える
もし、ここにいなかったら
もし、今日が十年前だったら
もし、私が私じゃなかったら
もし、ここが地球じゃなかったら
もし、生まれ変われるのなら
もし、聞いてくる
あなたはだれですか?
© Mari Awaya 2014
2017/11/09
いろいろ考える
「そういう人がいるんだから」
悪意のない
無関心から発せられる
不躾な質問は
日常の中に、結構存在して
その質問に
傷つく人のいることを
想像すら出来ない人も
世の中に、なかなかいる
© Mari Awaya 2014
2017/11/06
いろいろ考える
「足跡スタンプ」
ここまで来るのに
どんな道を通ったのか
誰にもわからないだろう
たくさん 歩いた
そのたくさんは
自分にしか分からない
歩いてきた足跡
それがスタンプカードにたまって
いっぱいになったら
目標に届く
夢が叶う
そんなふうに世の中は
できていない
けれど振り返って見る
足跡がついている
一歩ずつ残してきた足跡は
スタンプカードみたいに
たまったら終わりじゃない
それは一本の道をつくってきた
私にしか見えない 私の来た道
それはこれから進むべき道へ
私らしく歩いて行けるように
きっと 力をくれる
© Mari Awaya 2014
私家版詩集「夜になると、ぽこぽこと」より
2017/11/06
いろいろ考える
「するする」
するする書けるペンは
気持ちがいい
するする書けない
ペンの後に使ったのなら
なおのこと
するする するする
人生の難問も
とけて行ったら
気持ちいいか分からないけど
ちょっと
つまんなそうな人生になりそう
すーーーっと一直線だけしかない
そんな道に
© Mari Awaya 2014
「夢ぽけっと2014春号」より
2017/11/05
いろいろ考える
「どっちの中にも」
わるいことの後には
いいことがくる
いいことの後には
わるいことがくる
と言うけれど
これはほんと
でも実は
わるいことの中にいいことが
いいことの中にわるいことが
隠れていて
それが見えてくるだけ
なのかもしれない
© Mari Awaya 2008
「ぼくはぼっちです」「あわやまりのひとしずく」より
2017/11/05
いろいろ考える
「ぽっかり」
忘れた
ぽっかり
お月様
浮かぶ夜
ぽっかり
眠れない
眠れない
ぽっかり
忘れたこと
はっきり
思い出す
© Mari Awaya 2014
2017/11/03
いろいろ考える
「しおり」
読んだところまで
そこに、はさんである
わたしが知っているところは
ここまで
ここから先はまだ知らない
未来
まるで「今」を示すように
本の中にはさまっている
(c) Mari Awaya 2013
詩集「夜になると、ぽこぽこと」より