2019/11/23
「遠くの、あこがれ」
夏に
雪の歌がうたいたくなるように
真冬に
暑い日差しを恋しく想うように
はなれているから
その気持ちは大きくなる
誰かが
あこがれは近づいてしまったら
あこがれじゃなくなる
と言っていたのを
思い出した
(c) 2009 あわやまり
2019/11/23
夏に
雪の歌がうたいたくなるように
真冬に
暑い日差しを恋しく想うように
はなれているから
その気持ちは大きくなる
誰かが
あこがれは近づいてしまったら
あこがれじゃなくなる
と言っていたのを
思い出した
(c) 2009 あわやまり
2019/10/16
あなたが私の住む街に
来ているとき
あなたに似た人が
電車に乗って来て
びっくりした
でも似ているだけで
あなたとは全然
違う人
あなたはあなたしかいない
びっくりするほど
あなたひとりしか
いないのよ
(c) 2014 あわやまり
2017/11/09
寒いのは
単純に
今日の気温が
低いせいだ
涙が出るのは
明確に
あなたが
やさしいからだ
ただ単純な
やさしさ
それ以上
私が望むものを
含まない
やさしさ
© Mari Awaya
詩集「あなたに好き、と言う以外は」より
2017/11/03
あなた 知らないでしょ
あなたとの電話切ったあと
私がやっていること
私 口が開かないから
しごく原始的な装置で
(木でできた大きな洗濯ばさみみたいので)
口を開くようにしているの
そんなことは
別に知らなくてもいいのだけどね
でもあなた 知らないでしょ
電話先に切られるの 嫌だから
いつも私から
じゃあねって言ってるの
もっともっと話していたいけど
ほら 口開くように
練習しなくちゃならないし
私から切るの
なんてね うそだけど
あなたの最後に言う
おやすみが
あの頃みたいに
毎日聞けたらなって思うよ
(c) Mari Awaya 2008
手製本「氷のラブレター」、詩集「あなたに好き、と言う以外は」より
2017/11/03
最近
朝方になると声がする
寝ぼけているので夢の中のことかと思うが
どうやら外から聞こえるようである
あんたのこと、
好きよ
一生、
好きよ
それを繰り返す
朝っぱらから
どんな人が言っているのだろうかと思うけれど
布団から出たくないので
またうつうつと眠りにつく
ある日
駅から十分くらいのところにある
コンビニの掲示板に
「ピアノ教室生徒募集」
「家庭教師やります」
の張り紙といっしょに
「探しています」
の張り紙を見つける
青いインコです
頭や肩にのります
名前はチュー吉です
よく言う言葉は
「あんたのこと、好きよ」
と書いてあった
おお、こいつが声の主か
と納得し
チュー吉の写真をしばらくながめて
連絡先をメモして帰った
夜寝る前に
明日の朝チュー吉を驚かせないよう
ベランダの雨戸をちょっと開けた
ベットに横になって
あんたのこと、
すきよ
一生、
すきよ
声に出して言った
頭に浮かんできた「あんた」は
私のことをすきにはなってくれない人
でも、
あんたのこと、
すきよ
多分ずっと、
すきよ
心の中で言って
電気を消した
(c) Mari Awaya 2007
手製本「氷のラブレター」、私家版詩集「あなたに好き、と言う以外は」より