あわやまりあわやまり

詩

2017/11/03

「一年前のつらいこと」

夕暮れどき
雨戸を閉めようとしたら
天狗が持つような葉っぱの下に
あめあめこぞうが立っていた

 

あ、久しぶりだね
私が話しかけると

 

うん、また来たよ
この前のこと、まだつらい?
と聞く

 

私はふと考えてしまう
この前?
つらいこと?
そうだ
この子と前に会ったときは
つらいことを抱えていて
泣いてばかりいた
でもそれは 一年前のこと
今ではもう つらくない
あの痛みを懐かしく思うくらい

 

もうつらくないよ
時が流れるのって、すごいね
と私が言うと
あめあめこぞうはおかしな顔をして

 

そうかな すごいの?
よくわかんないけど
つらいのがたまっていくより
いいね
と言う

 

そして
またしばらく遊んでね
と言ってから
隣の庭に走って行った

 

きれいに咲いている
水色のあじさいが
わさわさっと揺れた

 

 

(c) Mari Awaya 2008
手製本「あわやまりのひとしずく」より

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