あわやまりあわやまり

詩

2018/01/03

「新年大オセロ」

まだ三が日だと言うのに
街へ行くと大勢の人がいた
駅前の広場には人だかりができていて
私は何事だろうかと
ひょこひょこ覗きに行ってみた

 

人の隙間から見えるのはおかしな光景だった
そこではオセロが行なわれていた
しかも特大のオセロだ
レストランのテラスにある
丸いテーブルの大きさくらいのコマでもって
白と黒、一つのコマを二三人がかりでひっくり返す
マスは白い石灰で書かれたようだが
皆が踏んでしまって、もうはっきりとは分からなくなっている
人だかりのまん中に少し高い台があって
その上に赤い旗を持って
ゲームの進行をしているような人がいる

 

しかし少しひいて見てみると
ゲームをしているように見えて
本当はなんの決まりもなく各々
裏にしたり表にしたりしているようにも見える
罵声をとばしたり喧嘩腰になっている人もいるが
テキパキと、まるでそれは仕事であるかのように
動いている人もいる

 

これは表裏がそれぞれ白と黒の駒を使って
マスの中でひっくり返したりしているから
てっきりオセロゲームだと思ったが
もしかすると別の何かなのかもしれない

 

私は近くにいた背の高い男の人に
これはどう言うわけですか
と訪ねた
すると男の人は、背が高い分背伸びなどせずに
ゆうゆうとオセロの方を見ていたのを
ちらっと私を見下ろして
どうにもこうにも
皆白黒はっきりつけたいんだよ
今年は新年からさ
と答えた

 

私はふうん、とうなずき
また人の隙間からオセロを見ていると
でもね、結局はさ
こうやって見ている方が楽だからさ
とその男の人が言って、最後ににっと笑った
その人は吸っていた煙草を地面でぐりっと消してから
またにっと笑いながらオセロを一瞥して
どこかへ行ってしまった

 

私はもうしばらくそこでオセロを見ていた
人だかりは入れ代わり立ち代わりして
当分そこにあった

 

 

(c) Mari Awaya

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