あわやまりあわやまり

詩

2017/12/13

「蓋しか」

蓋をしよう
そうした方が
きっと楽に生きられる

 

全て不確かな上の確かなもの
薄い紙切れ一枚も
模様が透けるきれいな紙の束も
重いキーホルダーの付いた堅そうな鍵も
幼い二人を写した幸せ溢れる写真も
引き出しの中の素っ気ないラベルのフロッピーも
お菓子の空き箱に入れて土に埋めた手紙も
それからそれから
はかり知れないほどたくさんの人を魅了する大きな目も
私の中指の曲がった両の手も
あの子のすらりとした外反拇趾の長い足も
あの人の右下にほくろのある小さな口も

 

不確かな上の不確かなものは
この際どうでもよいのだけれど
やっぱり問題は確かなもので
それは私がそうと
決めつけているだけにすぎないのです
だけれどそれを不確かと
認めるのには弱すぎるので
決めつけてしまうのは
仕方のないこと
つらくないこと
更にはきっと楽なこと

 

不確かなものを確かなものと思い込んで
不確かな世界の中で
不確かな私は
今日も不確かに蓋をする

 

 

 

(c) Mari Awaya

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