あわやまりあわやまり

詩

2017/11/03

「しおり」

読んだところまで
そこに、はさんである

 

わたしが知っているところは
ここまで
ここから先はまだ知らない
未来
まるで「今」を示すように
本の中にはさまっている

 

 

(c) Mari Awaya 2013

詩集「夜になると、ぽこぽこと」より

2017/11/03

「わたしはきのこちゃんになって」

森にそっと
たたずんでいようかしら
真っ黒なきのこちゃんは
美味しくなさそうだから
食べられないで
ずっとそこにいるかもしれない

 

木漏れ日が少しだけさす
しっとりとした
森のなかで

 

 

 

(c) Mari Awaya 2013

2017/11/03

「競っているわけでなく」

言葉は何を超えられるのか
心のどこまで潜れるのか
私たちはどこへ向かうのか

 

 

 

(c) Mari Awaya 2012
私家版「からっぽのところにすわった四行2」より

2017/11/03

「選択肢」

一つもなければどうしようもないけれど
たくさんありすぎても
選ぶことができない

 

 

 

(c) Mari Awaya 2012
私家版「からっぽのところにすわった四行2」より

2017/11/03

「たくさんいるように見えて」

実は、いないのかもしれない
自分しかいないように思えて
案外、いるのかもしれない

 

 

 

(c) Mari Awaya 2012
私家版「からっぽのところにすわった四行2」より

2017/11/03

「傘から、ぽろぽろ」

閉じた傘の
ひだのあいだには
今日我慢した涙も入っている

 

 

 

(c) Mari Awaya 2012
私家版「からっぽのところにすわった四行2」より

2017/11/03

「ぐるぐるシーツ」

この一年で
たくさんのシーツに
巻かれたわたし

 

ぐるぐるぐるぐる
サビシーツ
ぐるぐるぐるぐる
カナシーツ
ぐるぐるぐるぐる
クルシーツ

 

一枚ずつ脱いで
いいえ むしろ
さなぎから脱皮するように
わたしは
新しい季節を迎える

 

 

(c) Mari Awaya 2012
私家版「わたし、ぐるり」より

2017/11/03

「なわとび」

体育の授業の
なわとびがきらいだった

 

みんなでいっせいに始めて
ひっかかったら、その場に座る

 

わたしはいつも
一番に座った
そしてみんなが
ひょんひょん跳んでいるのを
見ていた

 

飛んでいるみつばちを見る
羽根のないみつばちみたい

 

どんなかたちかわからないけれど
みつばちですらなかったけれど
わたしにも羽根がついていると
わかったのは
もっとあとのおはなし

 

 

(c) Mari Awaya 2012
私家版「わたし、ぐるり」より

2017/11/03

「スイッチ」

ぱちん ぱちん
電球がきれているから
スイッチを
いれたのかきったのか
わからない

 

すー すー すー
手探りで探すけれど
真っ暗だから
わたしの中で隠れているから
どこにあるか
わからない

 

でも何かの拍子に
ぱちん
いつか見つかって
ぱちん
必ずあるから
ぱちん
明かりを灯そう

 

 

(c) Mari Awaya 2012
私家版「わたし、ぐるり」より

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