2017/11/03
いろいろ考える
定規がたくさん
落ちている広場に来てしまった
露店のようなものも
たくさん出ていて
「これどう?」
「これなんか、合いそうよ!」
「こっちにしたらどう?」
と次々に勧められる
わたしは息苦しくなって
早足で広場を出た
広場から離れた公園に着くと
ドキドキしながらも
わたしは
どの定規も持ってきていないこと
それを確認して
心底、ほっとした
(c) Mari Awaya 2012
私家版「わたし、ぐるり」より
2017/11/03
元気のないとき
わたしの胃は
きれいだった
つるんとして
この激痛のかけらも
見つからなかった
不思議なもんだ
人のからだって
皮肉なもんだ
またストレスだって
言われちゃって
ストレスってのは
ほんとうに
あなどれない子だな
目立つわけでもないのに
確実に
じわじわと
わたしのからだに
サインをおくって
「私に気づいて」
って言う
(c) Mari Awaya 2012
私家版「わたし、ぐるり」より
2017/11/03
やさしくてあたたか
こんがらがった
からまった
イヤホンを
ネックレスを
靴ひもを
夜にゆっくり
ほどく
ほどけなくて
投げつけたくなるときも
あるけれど
だんだん
いちにちのあれこれも
ほどけていく
(c) Mari Awaya 2012
私家版「わたし、ぐるり」より
2017/11/03
いろいろ考える
今ある星たちは
なにかわたしたちに
伝えるべきことを
表しているものでは
ないだろうか
見る人が見れば分かる
大切なことが
書かれている夜空
それを見られるところに
この青い星に
わたしたちは生かされているのでは
ないだろうか
ただそれを忘れてしまったのか
わたしは星空を見ても
なにか
なつかしく想うだけなのだけど
(c) Mari Awaya 2010
私家版「あの星から見える、うちの明かり」より
2017/11/03
いろいろ考える
クローゼットには
洋服のように
たのしいや
かなしい
うれしいや
せつない
それから
さびしいなんかも
ハンガーにかかっている
わたしは知らずにそれを着て
喜んだり
泣いたり
している
偶然を詰め込んだ宇宙
必然をかけているハンガー
(c) Mari Awaya 2010
「あの星から見える、うちの明かり」より
2017/11/03
四行の言葉
まくらに
うっぷして
ちょっと泣いた
小さな涙の跡が
まくらに
ひとつ
丸く残った
このことの
泣くことの
終わりのしるし
(c) Mari Awaya 2010
私家版「あの星から見える、うちの明かり」より
2017/11/03
元気のないとき
保育園に
まだ姉も一緒に通っていたある朝
姉は自分のお部屋に行ってしまって
さびしくて
わたしはひとり
お外の靴箱のところの
すのこの上に座って
おねい~
と泣いていた
わたしの中の
ちいさなわたしが
今でも
すのこの上に座って
だれかを
呼んでいる
(c)mari awaya 2009
私家版「あの星から見える、うちの明かり」より
2017/11/03
元気のないとき
夜中
眠ろうとするとき
次の日に
出かける予定のないとき
雨が
ポツ ポタ ポツリ
と降ってくると
安心する
雨の中
わたしは布団の中で
そこは
やわらかに守られていて
安全だ
*
昼間
家で何もしていなくて
雨が
ザア ザア サー
と降っていると
不安になる
雨の中
わたしはひとり
ここに
取り残されているようで
迎えに来てほしくなる
じぶんの家なのに
(c) Mari Awaya 2010
私家版「あの星から見える、うちの明かり」より
2017/11/03
やさしくてあたたか
神様か だれかが
宇宙をつくったなら
きっとちょっと
気をきかせたに違いない
星たちの住所はだれにも
教えないでおこう
生きものがいる星どうしは
遠くに
お互いを知らないように
遠くにおこう
そしたら
けんかもしないだろう
でもまだ見ぬもの
それを探すたのしみも
できるだろう
ほかの生きものが住んでいる
その星の住所は知らないけれど
わたしは まだ逢えない
けれどなつかしい誰かへと
こっそりメッセージを送る
(c) Mari Awaya 2010
私家版「あの星から見える、うちの明かり」より
2017/11/03
四行の言葉
響くアナウンス
誰と誰の、何と何の間隔?
もしかして、わたしの感覚?
(c) mari awaya 2010
私家版「からっぽのところにすわった四行」より