あわやまりあわやまり

詩

2020/03/14

「迷子」

電車で迷子の「こわがり」をみつける

困っているので

毛の色が濃い灰色になっている

私の前を行ったり来たり

降りようかどうしようか

うろうろしていて

かわいそうに思う

 

けれども私はすでに

「こわがり」を一匹連れているので

連れていく訳にもいかず

降りる駅で

なるべく迷子のこを見ないようにして

ぱっと降りた

 

私の「こわがり」がはぐれないように

かばんにつっこんで

 

 

 

(c) 2009 あわやまり

2020/03/07

「ある日」

まだまだ先のことかと思っていた

それは光って

忽然と現れたかのように思えた

こんなところに

まさか

いつも見ていたはずなのに

 

しかも二本も

それはけれどやはり

綺麗に輝いている

切って手にとると

不思議だ

見えなくなったかのように思える

 

透明のようで

黒々とした髪の毛に中にあると

すざまじい存在感を放つ

わたしの白髪

 

 

 

(c) 2016 あわやまり

詩集「線香花火のさきっぽ」より

2020/02/26

「忘れていたすき」

ずっとはいていなかった

スカートを出したら

そのプリーツから

ずっと前にすきだった人への

「すき」

がぽろんと落ちた

 

ひろって

窓を開けて

外に出してやる

 

もう飛べないのか

滑るように落ちて

とぼとぼと歩いて行った

 

 

 

(c) 2010 あわやまり

2020/01/26

「タピオカ」

気の合うひとと

話すのは楽しい

 

学んでいることも

仕事のことも

愚痴も

占いも

ドーナツも

タピオカも

 

時間を忘れて

話せるひとがいるって

日常のそこここに

楽しい色を足していって

嫌なことも

憂鬱なことも

消えるわけじゃないけれど

色のバリエーションがあって

豊かな絵になる

そんな感じ

 

その描きかけの絵があるから

生きて行ける

とさえ

思える

 

 

 

(c) 2019 あわやまり

2020/01/22

「父の片付け」

父の書類や本やらが

食卓に山盛りになっている

片付けるように言うと

帰ってきたらきれいになっていた

 

しかし振り返ってみると

居間のテーブルにそのまま

大移動しただけだった

 

お客さん来るんだから片付けて

と言うと

今度はそのまま書斎に大移動

 

わたしはそこに

世界の何かの縮図を

見たような気がした

 

 

(c) 2010 あわやまり

 

2020/01/21

「うっかり」

ある説明を受けている時に

うっかりが過ぎるとダメなんですね

この件では

と言われて

笑ってしまう

 

うっかりが過ぎるって

例えばどんなことですか?

と聞くと

 

そうですねえ

天ぷら油を火にかけたまま

放っておいて出かけて火事になる

みたいなことです

と言われる

 

そういうことを

うっかりが過ぎるというのか

納得したような

なんか他の言い方が

ないだろうかと考えていて

うっかりと言えば

やっぱり

サザエさんだなと頭に浮かぶ

サザエさんは

でも

うっかりしているのであって

うっかりが過ぎている訳ではない

 

 

 

(c) 2016 あわやまり

2020/01/11

「目の前のおじさん」

空いている電車で
私の前に座るおじさん
リュックを抱え
目をつぶっている

 

おかげで
私が泣いていることには
気がつかないようだ

 

じっとしていて
動かないし
よく見ていると
悟ったような顔をしていなくもない
穏やかな顔をして目を閉じており
神か仏の化身かもしれない

 

もしかしてこのおじさんは
私の全てを知っていて
泣きなさい
と無言で
言ってくれているのかも

 

おじさん
と心の中で呼びかけた時
おじさんは目を開け
素早く電車を降りて行った

 

神か仏か、人間かもしれないけれど
私を許してくれているように

思えた

 

 

(c) 2018 あわやまり

2020/01/08

「トイレに書かれていたもの」

あるトイレの

トイレットペーパーの上に

『本来の目的以外には使用しないこと』

と書いてあった

 

トイレを出て

階段を降りて

駅へ向かって

電車に乗って

本来の目的について

考える

 

電車に乗っている人たちを

ひそかに、見回す

 

たぶん、みんな

トイレットペーパーの

本来の目的は分かる

 

けれども

例えば、みんな

自分自身の本来の目的

というものを

知っているのだろうか

 

 

 

(c) 2010 あわやまり

2019/12/29

「足音」

寒くなったので

夏のスリッパから

もふもふしていて

中側があたたかいスリッパに変えたら

 

やっぱり音が違いますね
と言われた

 

よろこびも
かなしみも
良い予感も
嫌な予感も
きっとそれぞれ
違う足音をたてて
近づいてくるんだろう

 

それを聞き分けられるほど
私の耳は
良くないのだろうけれど
今だって、きっと

 

 

(c) 2019 あわやまり

2019/11/30

「虹の石」

小学校のころ

時々出店のおじさんがやって来た

小学校の前の坂を下ったところに

台の上に魅力的な品々を並べて

下校してくる生徒を待っているのだ

 

めんこ

スーパーボール

煙がでるカード

階段を勝手に降りるバネ

 

小学生の私達にとっては

どれも魅力的だった

 

中でも私がとりわけ魅了されたのは

クリスタルだった

太陽にかざすと七色に光って

虹を自分ひとりのものにできる気がした

 

その虹の石が

どうしても欲しかった

けれども私の家は小学校から

子どもの足で片道三十分

帰っておばあちゃんにおねだりしても

小学生には高い買いものに

なかなかいいよと言われず

やっとおこずかいをもらえて

三十分かけて小学校に戻ると

出店のおじさんはもういないのだった

 

毎回そんなことの繰り返し

結局虹の石を手に入れることはできなかった

 

でも手に入れられなかったからこそ

虹の石への想いは強く

その光り輝く様子を

ずっと忘れることはなかった

 

今でも虹の石がつくりだす光りを

私の中に持っている

 

 

(c) 2008 あわやまり

ページの先頭へ

ページの先頭へ