あわやまりあわやまり

詩

2020/03/30

「とにかく」

どこまでがぼーっとで
どこからがぼんやりなんだろう

 

それはその前の息切れを
落ち着かせるためかもしれないし
その後にすることの
助走かもしれない

 

とにかくその
ぼーっとか
ぼんやりに

かなりの時間を費やしている
気がついたら
時が盗まれたのかと思うほど
時間は経っている

 

しかし

その時間がなければ
サクサク仕事を進められたし
やるべきことも全てこなせたのに
とは
思わない

 

その時間は
たぶん今のわたしにとって
必要な時間だ

 

 

 

(c) 2020 あわやまり

2020/03/14

「迷子」

電車で迷子の「こわがり」をみつける

困っているので

毛の色が濃い灰色になっている

私の前を行ったり来たり

降りようかどうしようか

うろうろしていて

かわいそうに思う

 

けれども私はすでに

「こわがり」を一匹連れているので

連れていく訳にもいかず

降りる駅で

なるべく迷子のこを見ないようにして

ぱっと降りた

 

私の「こわがり」がはぐれないように

かばんにつっこんで

 

 

 

(c) 2009 あわやまり

2020/03/07

「ある日」

まだまだ先のことかと思っていた

それは光って

忽然と現れたかのように思えた

こんなところに

まさか

いつも見ていたはずなのに

 

しかも二本も

それはけれどやはり

綺麗に輝いている

切って手にとると

不思議だ

見えなくなったかのように思える

 

透明のようで

黒々とした髪の毛に中にあると

すざまじい存在感を放つ

わたしの白髪

 

 

 

(c) 2016 あわやまり

詩集「線香花火のさきっぽ」より

2020/02/26

「忘れていたすき」

ずっとはいていなかった

スカートを出したら

そのプリーツから

ずっと前にすきだった人への

「すき」

がぽろんと落ちた

 

ひろって

窓を開けて

外に出してやる

 

もう飛べないのか

滑るように落ちて

とぼとぼと歩いて行った

 

 

 

(c) 2010 あわやまり

2020/01/26

「タピオカ」

気の合うひとと

話すのは楽しい

 

学んでいることも

仕事のことも

愚痴も

占いも

ドーナツも

タピオカも

 

時間を忘れて

話せるひとがいるって

日常のそこここに

楽しい色を足していって

嫌なことも

憂鬱なことも

消えるわけじゃないけれど

色のバリエーションがあって

豊かな絵になる

そんな感じ

 

その描きかけの絵があるから

生きて行ける

とさえ

思える

 

 

 

(c) 2019 あわやまり

2020/01/22

「父の片付け」

父の書類や本やらが

食卓に山盛りになっている

片付けるように言うと

帰ってきたらきれいになっていた

 

しかし振り返ってみると

居間のテーブルにそのまま

大移動しただけだった

 

お客さん来るんだから片付けて

と言うと

今度はそのまま書斎に大移動

 

わたしはそこに

世界の何かの縮図を

見たような気がした

 

 

(c) 2010 あわやまり

 

2020/01/21

「うっかり」

ある説明を受けている時に

うっかりが過ぎるとダメなんですね

この件では

と言われて

笑ってしまう

 

うっかりが過ぎるって

例えばどんなことですか?

と聞くと

 

そうですねえ

天ぷら油を火にかけたまま

放っておいて出かけて火事になる

みたいなことです

と言われる

 

そういうことを

うっかりが過ぎるというのか

納得したような

なんか他の言い方が

ないだろうかと考えていて

うっかりと言えば

やっぱり

サザエさんだなと頭に浮かぶ

サザエさんは

でも

うっかりしているのであって

うっかりが過ぎている訳ではない

 

 

 

(c) 2016 あわやまり

2020/01/11

「目の前のおじさん」

空いている電車で
私の前に座るおじさん
リュックを抱え
目をつぶっている

 

おかげで
私が泣いていることには
気がつかないようだ

 

じっとしていて
動かないし
よく見ていると
悟ったような顔をしていなくもない
穏やかな顔をして目を閉じており
神か仏の化身かもしれない

 

もしかしてこのおじさんは
私の全てを知っていて
泣きなさい
と無言で
言ってくれているのかも

 

おじさん
と心の中で呼びかけた時
おじさんは目を開け
素早く電車を降りて行った

 

神か仏か、人間かもしれないけれど
私を許してくれているように

思えた

 

 

(c) 2018 あわやまり

2020/01/08

「トイレに書かれていたもの」

あるトイレの

トイレットペーパーの上に

『本来の目的以外には使用しないこと』

と書いてあった

 

トイレを出て

階段を降りて

駅へ向かって

電車に乗って

本来の目的について

考える

 

電車に乗っている人たちを

ひそかに、見回す

 

たぶん、みんな

トイレットペーパーの

本来の目的は分かる

 

けれども

例えば、みんな

自分自身の本来の目的

というものを

知っているのだろうか

 

 

 

(c) 2010 あわやまり

2019/12/29

「足音」

寒くなったので

夏のスリッパから

もふもふしていて

中側があたたかいスリッパに変えたら

 

やっぱり音が違いますね
と言われた

 

よろこびも
かなしみも
良い予感も
嫌な予感も
きっとそれぞれ
違う足音をたてて
近づいてくるんだろう

 

それを聞き分けられるほど
私の耳は
良くないのだろうけれど
今だって、きっと

 

 

(c) 2019 あわやまり

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