あわやまりあわやまり

詩

2019/10/17

「だいだいあめ」

窓ガラスに夕焼けが

ぽっちゃり丸く

うつる列車があります

その列車は夕方にしか走りません

走ってすることは

だいだいあめを集めること

ガラスにうつった夕焼けが

ぽろんぽろんと

落ちてくるのを集めるのです

 

私達は一生に三回

そのあめだまを食べられます

食べたい時は

「だいだいあめだまセンター」に

三枚つづりの券を一枚切って

封筒に入れて送ります

この券はパスポートやなんかと一緒にして

大切にしておきます

 

最近体調も悪く心も元気がないので

初めてあめだまを送ってもらいました

あめだまを送ってもらうのは

人生最大の失恋をしたときとか

つらい病にかかったときとか

未来に希望がもてなくなったときとか

人それぞれです

 

ある人はこのあめだまを

何度も食べられたらいいのにと言います

けれどもこれは万人に平等に

一人三回と決まっています

 

券を送って三日後

小さい箱に入った郵便物が届きました

開けると白い綿の中に

ビニールで包んだだいだいあめがありました

私はそっとつっついて

それからつまんでビニールを破いて

かすかに光っているように見えるそれを

ぱくっと口の中に入れました

それは熱をもっているようで

舌の上でしゅわぁっと溶けました

 

これで悪いところは全て治る

とは思わずに

私の中に小さな太陽ができて

それが元気に導いてくれたらいいと思うのです

 

なくなってからも胸の辺りに

温かい感じが残っていました

 

 

 

(c) 2007 あわやまり

詩画集「ぽちぽち、晴れ」より

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