あわやまりあわやまり

詩

2019/10/21

「おじぎ草」

友人がくれたおじぎ草をベランダに置いた
手作りの小さい器に植わっていて
なんともかわいい
撫でてやる度
しゃわしゃわ しゃわ
といって葉を閉じてしまうのもかわいい

 

ところが
夏の終わりに近づいても
おじぎ草は大きくなり続けた
あと少ししか大きくならない
と聞いていたので驚いた
大きな鉢に移しかえても
撫でてやると従順に
しゃわしゃわ しゃわ
と大きな葉を閉じる

 

そのうちに
朝起きて撫でてやると一緒に
しゃわしゃわ しゃわ
と閉じられる葉の中に入ってしまうようになった
初めのうちはそれでも数分すると中から出てきて
バナナだけ食べてからのろのろと仕事にいった
さらに日が経つと
葉っぱの中に入っていくのが日課になってしまった
もうずっと葉っぱの中で眠りたいと思い
入っている時間が日に日に長くなった
仕事にも遅刻して怒られることが増えていった

 

眠りたくて眠りたくて仕方がなかった
身体のいろんなところや
心のすみずみから
休もう、休もう
というメッセージがきていた
周囲の勧めもあり
楽しく生きていけるぞ
と思えるようになるまで
おじぎ草の中で眠ることにした

 

たくさん働かせた身体と
いろいろ悩ませた心も
ゆっくり眠りましょう
しゃわしゃわ しゃわしゃわ しゃわ
みなさん
ちょっとの間だけ
さようなら
きっとじきに
元気になります

 

 

(c) 2006 あわやまり

私家版詩集「眠って眠って、春」より

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