あわやまりあわやまり

詩

2020/01/03

「風と糸と凧」

各駅停車の電車が止まった駅で

川辺をながめる

凧あげをしている

 

強すぎない風をうけて

遠い地上と細い糸でつながりながら

あんなに高く飛んでいる

 

風も糸も大切だけれど

凧自身がなければ

あんなに高く

飛べはしない

 

それはなにかに

似ているような気がして

考えようとしたら

電車は動き出した

 

 

 

(c) 2014 あわやまり

2019/12/15

「あのひとの人生」

人はしばしば
あのひとは幸せだったのだろうか
なんて
もう本人に聞けないことを
考えたりする

 

もしその答えが
天国から送られてくる
なんて仕組みになっていたら
どうだろう

 

しかもそれが
幸せでなかった
だとしたら
私たちは更なる後悔を
背負うことになるだけだ

 

だから
残されたものたちは
想像するくらいしか出来ないことが
この世の

うまくできた仕組みなんだと思う

 

 

(c) 2019 あわやまり

2019/12/11

「本物」

作りもの
の中に
本物のようなもの

を感じ
現実
の中のそれは
当たり前ではあるけれど
思い描いていたものとは
かけ離れていて
それは当然
本物なのだけど
作りもの
あるいは
夢の中のもの

が本物みたいに

に思えるのは
何故だろう

 

 

(c) 2019 あわやまり

2019/12/08

「少年の明日」

インドのカルカッタの駅で

目だけは深く澄んで

きらきらしている少年が

明日を探している

 

通り過ぎる

忙しそうに働く人々がくれるのか

旅行に来た

外国の人たちがくれるのか

信じているのか分からない

神か仏がくれるのか

 

少年の明日は

どこに行ったらあるのか

 

こんなに貧しさと豊かさの差があって

こんなに自分は何も持ってなくて

こんなにたくさんの人がいる国で

1年に8万人の子供が行方不明になる国で

 

どうして、と

問うことも出来ないまま

ひたすらに明日を探している

 

 

(c) 2018 あわやまり

2018年「秋美vol.30」より

2019/12/07

「ほんとうの友達」

前に知り合いの人が

「環境がつくりだした友達」

という言葉を使った

 

学校や会社

アルバイトに習い事

その場にいるから友達だけれど

その場がなくなると

会わなくなるような人のことだ

 

大人になれば

そういう人が今までに

たくさんいたなぁと思い返す

その人たちも

人生の限られた間だったけれど

その時はとても大切だったよ

ありがとう、元気でいてねって

心の中で、思っている

 

そして

今も仲良くしている友達は

大切な宝のような

ほんとうの友達だから

これからもどうぞよろしく

いつもありがとう、って

直接会って、言いたい

 

 

 

(c) 2018 あわやまり

2019/11/16

「出会う」

この歌に出会うまで

今日までかかった

数年前に

世に出ていた

いい歌詞だって

評判だった

歌なのに

 

この本に出会うまで

今日までかかった

何十年も前に

書かれていた

有名な作家の

本なのに

 

その歌や本の来た道と

私の興味のベクトルが

偶然という場所で

決まっていたことのように

ぶつかったから

 

 

(c) 2008 あわやまり

→詩集「ぼくはぼっちです」より

2019/10/31

「あなたがいる世界」

生まれたてのあなたを

抱いたのは暑い日だった

まだ目も見えていないあなたは

とてもちいさくて

こわれてしまいそうだった

 

あなたがいる世界では

あなたがいない世界のことを

想像するのはむずかしい

 

すこし前まで

あなたのいない世界は

当たり前だったと言うのに

 

世界は

常に塗り替えられる

だんだんと

突然に

 

そして明日は

気がつかないくらいに

全然違う世界になっている

 

 

(c) 2018 あわやまり

詩集「線香花火のさきっぽ」より

2019/10/23

「みたらし団子」

野球のユニフォームを着た少年が

みたらし団子を持っている

ここは電車の中だ

 

彼の隣には

おしゃれをした若い女性が座っている

少年のみたらし団子は

たれをたっぷりつけて

つややかだ

 

それだけに 心配だ

 

少年にたれがついてしまうのなら、仕方がない

だけれどもし、隣の女性についてしまったら

これからデートに行くかもしれない

彼女はどうするだろう

 

速やかに、食べてしまえばいいのに

その思いをよそに

少年はみたらし団子を食べようとしない

 

たまに激しく揺れる電車の中で

みたらし団子をじっと見つめ

行方を見守る一人の女のことを

食いしん坊だと

どうか 思わないで欲しい

 

 

 

(c)  2012 あわやまり

2019/10/05

「火傷」

久しぶりに火傷をした

水ぶくれになった

指先だったから

かなり痛い

 

何で火傷したかと言うと

炊きたてのご飯だ

あの、罪のなさそうな

つやつやしている

白いご飯

油断していたのだ

 

私は初心にかえる

見せかけや間違った思い込みで

信じすぎるのは、危険だ

 

 

 

(c) 2019 あわやまり

2019/03/03

「かみ」

かみをかいにいく

しをいんさつするために

かみはおもたい

ずっしりと、おもたい

ビニールぶくろもやぶれそうだ

 

それにしをいんさつする

なおしてはまたいんさつする

それがかさなりかさなり

さんじゅうさつめのファイルに

なるころだ

 

これをだれがよむんだろう

これをだれがよんでくれるんだろう

とおもいながらも

わたしはきょうも

かみにしをいんさつして

ファイルにとじる

 

ふかくじつなせかいで

たしかなたいせつなものが

じぶんがしんじているものが

そこにあるんだと

じぶんをあんしんさせるように

だれかにとどくように

いのりながら

 

(c) Mari Awaya 2019

「秋美」vol.31より

ページの先頭へ

ページの先頭へ