あわやまりあわやまり

詩

2018/03/15

「まるちゃんがいる」

まるちゃんがいなかったとき

そのことを表すなら

0だ

まるちゃんがいることは

まるちゃんがいなかったとき

いないことは

0のまま

 

でも

まるちゃんはもういる

当たり前のように

それがもうずっとそうだったみたいに

そこからいなくなったら

マイナス1になる

 

つまりまるちゃんが

いてもいなくても

もうここに存在するから

いる、の1か

いたのにいない、のマイナス1か

もう0にはならない

 

わたしは生きている間ずっと

そばにいてもそうじゃなくても

まるちゃんには1であって欲しい

 

 

(c)Mari Awaya 2018

2018/03/05

「神様の用意したリュック」

それには

言葉がたくさんつまっていて

その人に一生のうち必要な

言葉たちが入っている

 

ふとした時に

人生の重要な局面で

神様は誰かに

その言葉たちを言わせる

 

そのリュックに

もうひとつだけ

入っているものがあって

それは

なのだけど

家族でも

恋人でも

夫や妻でも

自然でも人類でも

愛することが出来る

これはリュックに入っていながら

どんどん出て来る

不思議なもの

 

忘れてはならないのは

自分を愛することも

出来ると言うこと

 

 

 

(c) Mari Awaya 2017

秋美29号より

2018/02/16

「なにもかも」

なにもかも

上手く行くってことは

本当はないのかもしれない

ほとんど上手く行っているように見えて

大きいか小さいか

わからないけれど

上手く行かないことが

隠れている

 

だからもしかしたら

なにもかも

どうにもならないってことも

本当はないのかもしれない

本当にもうどうにもならないように見えて

小さな

希望や救いが

そこには混在している

 

その存在に気がつければ

なにもかも

ではなくなり

それはいい方向へ導いてくれる

強く光る星となる

 

 

 

(c) Mari Awaya 2016

2018/02/03

「うちゅうのおふろ」

ひどくつかれた
ふかくきずついた
たましいたちも
うちゅうで
おふろにはいれれば
いいね

 

あったかくて
きれいなおふろ
あがったら
ふかふかのタオルで
ふいてあげる
それから
つめたいものでも
ぐびぐびっとのんでさ

 

そしてすこし
おもえればいいね
またうまれてみようかな
あのあおいほしに
うまれかわってみようかな
って
すこしだけでも
いいよ
なんかいもおふろにはいれば
きっとまた
うまれてみたく
なるよね

 

 

 

(c) Mari Awaya

2018/01/22

「もうひとつの世界」

駅にある
パン屋の隣の
そのカフェは
突き当たりの壁一面が
鏡になっている
空間を広く見せるため
なのかもしれない

 

そのカフェにいると
鏡の向こうには
もうひとつの
違う世界があって
よいしょ
と入っていけば
向こうの世界に
入れそうな心持ちになる

 

向こうの世界のパン屋で
パンを買い
駅からバスに乗って
家に着くと
そこには
誰が待っているのだろうか

 

 

(c) Mari Awaya
「秋美」vol.28より

2018/01/10

「貝を焼く姉」

姉は「貝のくに」出身です
場所はどこにあるか分らないけれども
我が家で「貝のくに」出身なのは姉だけで
他は皆違うけれども
ついでに言うなら私は
「しいのくに」出身です

 

姉は「貝のくに」出身だけあって
しょっちゅう貝を焼きます
私が生まれてからずっと
そばにくっついては貝を焼いていました
にっこり笑いながら貝を焼く姉と
ちょっと嫌そうな顔の私

 

だけど姉が貝を焼くのは
楽しい時ばかりではなくて
父が病んでいる時
母が悲しんでいる時
私が苦しい時になおのこと
せっせせっせと貝を焼くのです

 

姉は家族や友人のために
貝を焼くのが好きなのです
貝を焼いて、それが
ぱかっぱかっと開くことが
姉の生き甲斐なのだと思います

 

姉は思うに
「貝のくに」出身者の中でも
優秀な方に入ると思います
それはつまり
貝を焼き過ぎということでもありますが
身近にこんなに優秀な「貝のくに」の人がいることを
最近になって私は
うれしく思えるようになりました

 

それと同時に
いままで焼いてくれた数々の貝のこと
本当にありがたく思います

 

あたたかいおせっかいをいつまでも
私たちの隣と
もうひとり増えた大切な人の隣で
どうか焼きつづけてください

 

 

(c) Mari Awaya

2018/01/03

「新年大オセロ」

まだ三が日だと言うのに
街へ行くと大勢の人がいた
駅前の広場には人だかりができていて
私は何事だろうかと
ひょこひょこ覗きに行ってみた

 

人の隙間から見えるのはおかしな光景だった
そこではオセロが行なわれていた
しかも特大のオセロだ
レストランのテラスにある
丸いテーブルの大きさくらいのコマでもって
白と黒、一つのコマを二三人がかりでひっくり返す
マスは白い石灰で書かれたようだが
皆が踏んでしまって、もうはっきりとは分からなくなっている
人だかりのまん中に少し高い台があって
その上に赤い旗を持って
ゲームの進行をしているような人がいる

 

しかし少しひいて見てみると
ゲームをしているように見えて
本当はなんの決まりもなく各々
裏にしたり表にしたりしているようにも見える
罵声をとばしたり喧嘩腰になっている人もいるが
テキパキと、まるでそれは仕事であるかのように
動いている人もいる

 

これは表裏がそれぞれ白と黒の駒を使って
マスの中でひっくり返したりしているから
てっきりオセロゲームだと思ったが
もしかすると別の何かなのかもしれない

 

私は近くにいた背の高い男の人に
これはどう言うわけですか
と訪ねた
すると男の人は、背が高い分背伸びなどせずに
ゆうゆうとオセロの方を見ていたのを
ちらっと私を見下ろして
どうにもこうにも
皆白黒はっきりつけたいんだよ
今年は新年からさ
と答えた

 

私はふうん、とうなずき
また人の隙間からオセロを見ていると
でもね、結局はさ
こうやって見ている方が楽だからさ
とその男の人が言って、最後ににっと笑った
その人は吸っていた煙草を地面でぐりっと消してから
またにっと笑いながらオセロを一瞥して
どこかへ行ってしまった

 

私はもうしばらくそこでオセロを見ていた
人だかりは入れ代わり立ち代わりして
当分そこにあった

 

 

(c) Mari Awaya

2017/12/29

「隠し場所」

カレンダーに隠れて
見えていない壁には
実は四角い穴があいています

 

わたしはそこへ
この一年の秘密を
すこしずつ隠していって
カレンダーをはずす頃に
一緒に捨ててしまうのです
積み重なった些細な秘密は
そのくらいで捨ててしまっていいでしょう

 

そうですね、それじゃあ
もっと大きくて重い秘密は
わたしのおへそにでも隠しましょう

 

 

(c) Mari Awaya
私家版詩集「帰り道」「わたし、ぐるり」より

2017/12/24

「人生」

ちょっと出かけてきますね
ちょっとの間ですからね

 

そうやってきた
この世界ですもの
何をおみやげにしましょうか

 

いえいえ、おみやげは
あとからついてくるものですね
このちょっとの間を
はしからはしまで
精一杯楽しんでゆきましょう

 

このちょっとの間を
私ひとり分、できる限りに

 

 

(c) Mari Awaya
私家版詩集「眠って眠って、春」より

2017/12/18

「ラッキーバス」

ちっぽけな常識にとらわれた
ちっぽけな悩みを
背中いっぱいにしょって
夕方の駅に辿り着いた
小銭しか入っていないお財布で
今できる一番の贅沢
たこやきを一箱買った

 

けれどもふと見ると
私の小さな幸せ
今日はラッキーバスが
ロータリーに停まっていた

 

やったやった
駆け足でバスに向かう
このバスの存在を
皆はあまり知らないようで
たいていいつも中はがらがら
しかもラッキーバスなのに
料金は他のと同じで二百十円

 

ラッキーバスは
ロータリーを後にして
人込みを抜けて山へと向かう
沈みかけた太陽を
追い掛けて追い掛けて
追い付いた所で見えたのは
たった一つの太陽が見せる
たった一回きりのさよならショー
濃い淡い青色と薄い水色
それに黄色の強いオレンジが
きれいに合わさった演出に
私の小さくちっぽけになりかけていた心は
少しだけ膨らんだ

 

世界はとても広いと言う事を
ちっぽけな私をつくり出したのは
ちっぽけな私の価値観だったと言う事を
身を以て知ったあの日々の事を
ひざの上にたこやきの温かさを感じながら
ほんの少し思い出せたよ

 

ラッキーバスは急な坂を上りきって
最後の乗客とまだ温かいたこやき一箱を
静かに降ろして夜の中に消えて行った

 

 

(c) Mari Awaya

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