あわやまりあわやまり

詩

2020/05/04

「がんばらない」

ある意味

がんばることより

がんばらないことの方が

難しいのよ

とある人が言った

 

ちょっとがんばるの

やめてみたら

とも

 

わたしはがんばって

働いて

からだとこころを

壊して

またがんばって

元気になろうとしていた

 

がんばらないで

自然にまかせて

なるようにしていてごらん

そういうときも

ちゃんとその先へ繋がっているから

 

 

(c) 2009 あわやまり

→「詩集「ぼくはぼっちです」(たんぽぽ出版)

「続・一編の詩があなたを強く抱きしめる時がある」(PHP研究所)

「小学生で出会っておきたい55の言葉」(PHP研究所)より

2020/04/29

「夜の行進」

眠ろうと

目を閉じている

私の耳のそばを
小人たちが行進して行く

 

長い行列だ
ずっと歩いて行く

 

私が目を開けたり
声をかけてしまったら
消えてしまう

 

しばらく歩く音が続いた後
遠ざかって行くのと

同じくらいに
小さな声が聞こえた

 

いいなぁ
こんなふうに寝てるだけで
明日に行けるなんて
ぼくらは毎晩

歩いて

明日まで行くのに

 

 

 

 

(c) 2020 あわやまり

2020/04/27

「ある執事の提案」

大きな地震が来たらどうしましょう

と不安がるお嬢様に

執事はこう言った

 

自信を持って言えますのは

ご自身では

地震を

どうすることもできません

ならば地震が起きたとして

そうですね

濁点がひとつ下に落ちると

じしんがしじん

詩でも書かれては

いかがでしょう

 

 

 

(c) 2009 あわやまり

2020/04/22

「この星のリレー」

今日も

この星のどこかで

バトンは手渡される

 

人は皆

この星に生まれたとき

自分ひとり分のいのちと

そのいのちを誕生させた

すべての人の

想いを受け取る

 

もしかしたら

ずーとさかのぼって

人ですらないときのことも

 

誰に伝えようとしているんだろう

何を伝えようとしているんだろう

 

この星の

終わりの方の世界を

生きている私たちは

それを知らないまま

あるいは知りながら

そんなことはどうでもいいという人も

偶然のように必然に

つなげているんだ

明日へ 明日へ

 

 

(c) 2009 あわやまり

→詩集「ぼくはぼっちです」より

2020/04/18

「おじさんと肉まん」

夢のなかで

わたしのご先祖にあたるおじさんが

 

おじさん

中華街で歩きながら

肉まんをみっつも

食べたんだよお

と言って

がははと笑った

 

いいなあ

わたしも食べたいなあ

つられて

がははと笑う

 

夢のなかはときどき

とても自由で平和で

楽しげだ

 

 

(c) 2017 あわやまり

2020/04/16

「ベリッ」

後ろでベリっと言ったので

何かと思って立ち止まった

 

どうやら私の後ろではなく

背中

らしいので

見えない

 

おそらく

何かが剥がれたらしかった

でも

下を見ても何も落ちていないし

手で触っても何もない

 

ああ

なにもない

が剥がれたのかもしれない

なにもない

と自分を
思い込んでいたことが

 

 

 

(c) 2020 あわやまり

2020/04/01

「ほんとうのあなた」

あなたの心の奥に

澄んで綺麗な湖があること

あなたはちゃんと

知っている?

 

その湖を

守るのもあなた

愛するのもあなた

あなたにしか出来ない

そうしていれば湖には

たくさんの動物が集まり

豊かな森になっていく

 

 

 

(c) 2017 あわやまり

*桜の花言葉「精神の美」「優美な女性」より書いた

2017年「詩と絵のカレンダー」より

 

2020/03/30

「とにかく」

どこまでがぼーっとで
どこからがぼんやりなんだろう

 

それはその前の息切れを
落ち着かせるためかもしれないし
その後にすることの
助走かもしれない

 

とにかくその
ぼーっとか
ぼんやりに

かなりの時間を費やしている
気がついたら
時が盗まれたのかと思うほど
時間は経っている

 

しかし

その時間がなければ
サクサク仕事を進められたし
やるべきことも全てこなせたのに
とは
思わない

 

その時間は
たぶん今のわたしにとって
必要な時間だ

 

 

 

(c) 2020 あわやまり

2020/03/24

「意志」

新年明けたばかりの電車に乗る

 

規則正しくぶら下がるつり革は
そろってゆれる
電車がゆれるたび
同じにゆれる

 

その様を眺めていると
その中で何故か頑なに

ゆれていないつり革を見つけた

 

よく見ると
そのつり革は
口をへの字にして
何か言っている

 

ゆれるから
ゆらされるのは
ごめんだ
ぼくはぼくのみちをいく
ほかがよくみえても
ときに
こどくがつらくても

ここにいたって

みちはえらべる

 

誰も気がつかなくても
強く頑なに

ゆられない

孤高のつり革

 

 

 

(c) 2020 あわやまり

「秋美vol.32より」

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