
2020/03/18
お話のような
わたしの部屋の窓の方から
ちいさな声で
できる
できない
できる
できない
と聞こえる
近づいてよく見ると
カーテンの花柄の
赤い花の花びらが
声に合わせて
ひらりひらりと落ちていく
どうやら花自身で
花占いしているみたいだ
何ができるの?できないの?
と聞くと
声と花びらはぴたっと止まった
もしかしたら他の花も
何を占っているのか知らないけれど
(わたしの恋とか仕事のことかも)
花占いをしているのかも
最近カーテンの花の色が
薄くなった感じがしていたのは
そのせいかな
(c) 2012 あわやまり
→詩画集「わたし、ぐるり」より
2020/03/16
伝えたいこと
今このバス停で
バスを待っているたくさんの人が
バスがやってくる方向を
一様に向いて
今か今かと
待っているように
どこかわからないけれど
どこかのバス停で
どのくらいの人か
どんな人か
わからないけれど
あなたがやってくるのを
待っている
あなたの方を
ずっと向いて
待ちこがれるように
(c) 2020 あわやまり
2020/03/14
こんなことがあった
電車で迷子の「こわがり」をみつける
困っているので
毛の色が濃い灰色になっている
私の前を行ったり来たり
降りようかどうしようか
うろうろしていて
かわいそうに思う
けれども私はすでに
「こわがり」を一匹連れているので
連れていく訳にもいかず
降りる駅で
なるべく迷子のこを見ないようにして
ぱっと降りた
私の「こわがり」がはぐれないように
かばんにつっこんで
(c) 2009 あわやまり
2020/03/07
こんなことがあった
まだまだ先のことかと思っていた
それは光って
忽然と現れたかのように思えた
こんなところに
まさか
いつも見ていたはずなのに
しかも二本も
それはけれどやはり
綺麗に輝いている
切って手にとると
不思議だ
見えなくなったかのように思える
透明のようで
黒々とした髪の毛に中にあると
すざまじい存在感を放つ
わたしの白髪
(c) 2016 あわやまり
→詩集「線香花火のさきっぽ」より
2020/03/04
お話のような
・・・・・・・・・・(黄色い家の赤い車・作)
このあいだ僕は見てしまった
ちょうど日が暮れて
色んな家の色んな夕飯のにおいが
優しく皆の帰りを待っている頃
誰も通っていない道の
電信柱がこう
一回腰をかがめて
そうしてから
今度は反対にそって伸びをした
僕はとても驚いて
隣の家の寝ている車に
教えてやろうかと思ったけれども
確かによく考えてみると
電信柱だって四六時中ああやって
まっすぐ立っていなきゃならないのだから
たまに伸びをするくらい
してもいいものだと思った
この話がみんなの暇つぶし程度の噂になるのは
ちっともいい気分がしなくて
僕は誰にも言わないことに心に決めて
じっとしていた
その電信柱はすでに
僕よりもじっとしているようだった
(c)2004 あわやまり
「へその中の話たち -冷たい風が運んだ話-」
2020/03/01
やさしくてあたたか
晴れていても
曇っていても
その上の宇宙では
無数の星たちがささやきあって
誰も見ていなくても
樹々は踊り
花は歌う
この世界に生きる喜びが
私たちにも波及するように
(c) 2017 あわやまり
2017詩と絵のカレンダー3月
木蓮の花言葉「自然への愛」より
2020/02/29
いろいろ考える
自分のつらさが
苦しみが
分かってもらえていない
と思うとき
それも当然だ、と
割り切ることも
必要なのかもしれない
だって世の中に
本当の意味で
同じ立場の人なんて
いない
一見似ているようで
分かり合えそうだけれど
根っこが違ったり
根っこは同じだけれど
今吹いている風は違ったりする
そう思っても
どうしてか
やっぱりすこしでも
分かってもらいたい
と思ってしまうのは
弱さなのか
それとも
愛が欲しいだけなのか
(c) 2020 あわやまり
秋美vol.32より
2020/02/26
こんなことがあった
ずっとはいていなかった
スカートを出したら
そのプリーツから
ずっと前にすきだった人への
「すき」
がぽろんと落ちた
ひろって
窓を開けて
外に出してやる
もう飛べないのか
滑るように落ちて
とぼとぼと歩いて行った
(c) 2010 あわやまり
2020/02/23
やさしくてあたたか
あたたかな陽が差し込む
リビングのソファに
横になっていて
ふと目を開けると
陽の光りに照らされて
リビングのほこりたちが
キラキラきらめいていた
いつもほとんど気づかれない
小さな小さなほこりたちが
意思を持っているように
踊っているのだった
わたしがそこに
そっと手を触れると
ほこりたちは
静かに近づいてきて
優しく包み込むように
触れてくれるようだった
そこにわたしの大切な人が
本当にいて
まだそばにいるよって
教えてくれているようだった
その奇跡に
わたしは深く感謝した
(c) 2020 あわやまり
「秋美」vol.32より
2020/02/19
いろいろ考える
水曜の夜は
なぜだか分からないけれど
八時くらいに眠くなる
そして眠ってしまう
もしかしたら水曜の夜には
知らない方がいい
なにかしらの事柄があって
(十時頃に悪魔の子どもが尋ねてくる、とか
可愛がっている近所の犬が狼に変身する、とか
部屋中にグリンピースがわいてくる、とか)
私はそれを第六感でキャッチして
自ら眠る体勢に
持っていっているのかもしれない
知らない方がいいことは
この世にいくつかある
(c) 2008 あわやまり

